7年前の2001年、バタフライのホームページに、ドイツの映画学校の生徒が卓球を題材にした映像作品を撮って賞を受賞したとの記事が載った。http://www.butterfly.co.jp/news/category/archive/fw011018.html
「小さい、速い、制御不能(Small, Fast, Ouf of control)」という作品だ。どうにかしてこれを見たいと思い、記事を載せたタマスさんに問い合わせたが、わからないという。それで、卓球のDVDなどを作っている仁禮さんという知人に相談したところ、手を尽くしてくれて、結局、ITTFの榎並さんを介して、ドイツ在住の守永さんという方がテレビ放送をVHSテープに録画したもののコピーを入手することができた。
これが筆舌に尽くしがたい素晴らしい作品なのだ。題名は、もちろん卓球競技の恐ろしいまでの緻密な世界を表現している。この題名だけで、もうこの作品の監督が只者ではないことがわかる。今や世界のトップ選手となったドイツのエース、ティモ・ボルの成長期の卓球にかける日常を1年間追い続けたドキュメントだ。過剰な演出を排した淡々とした日常描写と、挿入される卓球の映像のバランスがすばらしく、なぜか泣けてくる。ボルが自分のフォアハンドの連続写真のパラパラマンガを無心にめくるところなど、演出に決まっているのだが、演出に見えないひたむきさがある。窪塚洋介主演の映画『ピンポン』と同質の感動があるが、すべてが本物な分だけ勝っている。ちなみに、『ピンポン』のラストで主人公が挑戦するドイツのブンデスリーガが、この作品の舞台となっている。『ピンポン』に感動した人は、ぜひこの本物のドキュメントを見て欲しい。
今、世の中にあるすべての卓球の映像のなかで、最高の芸術的作品だろう。難点は90分とちょっと長いことと、ドイツ語なのでさっぱり意味が分からないことだ(後に守永さんが全訳をしてくれた)。
もっとよい画質で英語字幕でこれを見たいので、DVDが欲しいとずっと思っていたが、映画学校の生徒が作った作品では、DVDは出てないだろうとあきらめていた。しかし昨夜、ふと思って、ドイツ語の原題”Klein, schnell und auβer Kontrolle”でネット検索してみたら、なんとDVDが発売されているではないか。当然、英語の字幕付だ。もう、狂喜して注文をしてしまった。サイトがドイツ語ばかりでわけがわからなかったが、このDVDが手に入るなら間違って1万円くらい払っても全然かまわないので、適当に入力して、とにかく注文をした。
日本の卓球メーカーはぜひともこれの日本語字幕版のDVDを発売して欲しいものだ。売れないはずがないと思うんだがどうだろう。YouTubeでもずっと見つからなかったが、やはりドイツ語原題を入れたら出てきた。http://jp.youtube.com/watch?v=eoySyFLEd44
ちょっとこれを見ただけで、ただ事ではない映像作品であることが、卓球ファンならわかるはずだ。ボルもかっこいいし、音楽もたまらなくいい。すべての卓球ファンはこれを見るべきだ。これを見ないで何を見るのだ?という感じだ。
DVDの発売サイトはこちら。http://www.doccollection.de/index.php?cat=KAT01&product=002
もちろん、トラブルの責任は負いかねる。なにしろ私も昨夜注文したばかりなのだから。それにしてもこのDVD発売元、売る気があるんだろうか。ドイツ語ばかりのサイトでは、誰もこんな作品があることに気づかないではないか。世界中の卓球ファンがこんな作品を待っているというのに。