知的好奇心

オランダの画家、レンブラントが膨大な骨董品をコレクションしていたことを知った。その中には、アンモナイトの化石などもあったが、17世紀当時の科学では、それが一体何なのかを知る物は誰もいなかった。化石が古代の生物だという説は当時もあったらしいが、進化論自体がまだ認められていないし、古代といっても、それが何年くらい前なのかを知る方法もなかった。

分からなかったのは化石だけではない。空に浮かんで見える太陽や月や星が何なのか、宇宙の始まりはどうなっているのか、光とは何なのか、こういうことがほとんど何も分からないままに当時の人々はその生を終えていったわけだ。どんな天才たちでさえもだ。私が月や星を見るたびに思うのは、その神秘や美しさではなく(そんなものは感じない)、その正体を知ることなく生を終えていった無数の人間たちのことだ。

その後の地道な科学の積み重ねによって、現代の我々は凡人でも「化石は何なのか、どういう原理でいつごろできたものか」を容易に知ることができる。知的好奇心という点ではこんなに幸せなことはない。現代に生まれた自分はなんと幸運なのだろうと思う。そしてこれを読んでいるあなたもその仲間なのだ。