杉浦くんが石川を詰問した話を書いたが、実は私も似たようなことをしたことがある。どうも石川のあやふやなところに突っ込みたくなってしまうのだ。
あるとき石川が「徹夜をすると疲れてヒゲが伸びるのが早くなるんですよ」と言った。私はこういういい加減な話が嫌いなのだ。「それ、誰か測定した人がいるのか?」というと石川は「そんな、測定しなくたって明らかですもん」と言う。いよいよ腹が立ってくる。「お前ね。そりゃ常にヒゲは伸びてるけど、普通に寝た場合と徹夜を比較してどっちがヒゲが伸びたかなんて、5倍も差があるならともかく、測ってみもしないでわかるかね。徹夜で顔がやつれていることだって判断に影響が出るだろ。そういうデタラメな話は止めろ」と言った。石川は「こんな話で”データあるのか”なんて異常ですよ条太さん」と言われたが、石川の話はどうも私のセンサーにひっかかってしまうのだ。
もっとも私だって誰にでもこんなことを言うわけではない。大学で工学を学んでいる奴がそんなことを言うから腹が立ってくるのだ(しかも彼の研究室は計測工学なのだ!)。そしてこういう怪しい話を持ち込んで断言するのはいつも石川なのだ。
このヒゲの話には実は背景がある。「徹夜をすると疲れてヒゲも伸びなくなる」というまるで正反対の話を会社の上司から聞いたことがあるのだ。さすがに反論はしなかったが、こんないい加減な話をまともに聞くつもりは私にはない。