茶碗の持ち方

マークと日本でごはんを食べたとき、ごはん茶碗をお盆に載せたまま食べようとしたのだが、そのときの状況は今思い出してもおかしい。

彼は、茶碗をまったく触らなかったのではない。動かないように、左手で手のひらを下にして茶碗の上から縁をわしづかみにして固定し、親指と人差し指の間のすきまから箸を突っ込んで食べようとしたのだ。これでは納豆が手についてしまって不憫なので、私は「茶碗は左手に持つようにできているので、持った方がいい」と持ち方を見せてやった。

ところが、マーク、私の手元を見てもどう持ったらよいかわからなかったと見えて、今度は茶碗の下端の直径が小さくなっている部分をマイクを持つように握って、茶碗の縁に親指をかけようとしない。これもまたとても危なっかしく見ていられないので、とうとう私はマークの手をとって持ち方を教えてあげたのだった。

初めてやることはこれほどまでに難しいのだなと思った。