小林秀雄の実力

小林秀雄の『考えるヒント2』という文庫本を手に入れた。小林秀雄といえば昭和の知の巨人と言われ、大変な評論家なので、評論好きの私としてはぜひとも読んでみたいと思っていた。

ところがこの本、偶然にものっけから当時話題になっていたユリ・ゲラーの超能力ブームについて書いてある。大好きな話題だ。小林秀雄がどのように鋭くこのバカ騒ぎを斬るのかと期待して読んで驚いた。なんと小林は、ユリ・ゲラーのインチキ超能力を本気にし、「不思議を不思議として受けとる素直な心が少なく」「今日の知識人たちは根底的な反省を欠いている」などと書いている。こんな分析力でどこが知の巨人なのだろうか。

仮にユリ・ゲラーがインチキなら、それは手品のトリックである。それならトリックに精通したプロの手品師の意見を仰ぐべきだろう。素人の小林が判断できるわけもない。

知識人が反省を欠いているのはその通りかもしれないが、相手がユリ・ゲラーのヘタな手品では反省のしようもない。

最初にこの話を読んだので、後から出てくる柳田国男やら論語の話もすべてインチキっぽく思えて読む気が失せてしまった。

知の巨人といわれる小林秀雄といえども、苦手な分野もあるということなのだろう。少なくともこの分野では私の圧勝だ。がっかりした反面、アインシュタインを卓球でスコンクにしてやったような安心感も得ることができたので、まあよしとしよう。