昨日、日本の本社からVIPが数名、工場の視察にいらした。社員一同、緊張の趣で向かえ、滞りなく工場視察を終えることができた。
夜になって、VIPたちとの飲み会に参加せよとの連絡があり、行くことになった。そんな偉い人たちと何を話したものか、失言をして「ハイ、君クビね」などということになったらどうしようなどと不安になっていると(そんなことがあるわけもないのだが)妻が「話す必要なんかないの。偉い人たちはみんな話がうまくて話したがりで、それで偉くなったような人たちなんだから、盛り上げるように聞けばいいの。誰もお父さんの話なんか望んでないから」と言われた。なるほど、そう言われればそうだ、と気持ちが楽になった。
確かにVIPたちは全員が話が面白くて引きこまれ、とても楽しい時間を過ごした。中でも前社長についての話が可笑しかった。
事前情報で、VIPの中でもっとも偉いIさんは体育会系だと聞いていたので、いきなり「並べえ~っ!」「声が小さい!」などと言われてシバかれたりはしないかと思っていたが、そんなこともなく、むしろ隣の席の私に話題を振る気遣いさえ見せる人だった。
そのうち、私が卓球に詳しいことに話がおよぶと、そこから思わぬ展開となった。なんとIさん、卓球経験者というわけでもないのに卓球に詳しいのだ。荻村伊智朗の話を振ってくる一般人がいるとは夢にも思わなかった。71年の名古屋大会でのピンポン外交、90年代のスウェーデンの選手が左利きが多かったこと(確かに6人中、3人が左利きだった)というようなことまで知っていて、あろうことか「石川は可愛い」「彼女コンタクトなんだよね」「彼氏いるの?」などと言う始末だ。
実はIさんは体育会系というよりは自称「スポーツオタク」で、卓球について以上の詳しさで他のスポーツ全般について広く深く知っていて、オリンピックの記録やら用具の歴史などについての知識で頭が一杯の人だったのだ。それで、卓球に関しても素朴な疑問がいろいろとあるらしく(カットマンの戦略についてなど)それらの質問に答えて、とても喜んでもらえた。
卓球の話をするときはなぜかフォアハンドの素振りを入れながら話してくれたのだが、そのフォームもちゃんと肩が回っていて卓球部といってもおかしくないフォームだった(フォームのおかしい卓球部員には反省してもらいたい)。嬉しい驚きだ。
卓球に詳しいのはIさんだけではない。もうひとりのVIPであるMさんが、愛ちゃんや石川に言及したのは当然のこととして、荘則棟とベンクソンの名前を出したのには驚いた。荘則棟が前陣速攻で、後にスポーツ大臣になったなどという話をするのだ。他にも『タマス』だの『ニッタク』『協和発酵』などの単語を口走るのだから、いったい何者なのだろうかこの人たちは(さすがに『アームストロング』とは言わなかった)。
これまで、卓球に詳しいことが仕事で役に立ったことはほとんどないが、今回ばかりはスポーツオタクのVIPと楽しく語らう役に立ち、無駄なことというのはないもんだなと思った(二度とないと思われるが・・)。
最後にIさんに「卓球の話は面白いけど女の子にはウケないでしょ」と言われた。アウッ。
なお、宮根さんも得意の体操のウンチクを披露し、それもかなり盛り上がっていたので私も嬉しかった。