『戦前の少年犯罪』を読了した。
著者は、戦前には現在とは比べ物にならないほどめちゃくちゃな凶悪犯罪が多かったかこと揶揄を交えて表現しており、犯罪が題材なのにもかかわらず、つい声を出して笑ってしまった。
中国に軍属として旅立つ学生を送るために、駅でかちあった他校学生たちがささいなことで乱闘になった事件について「これから戦争に行こうというときに殺し合うんですから、愛国心以上の愛校心です。命がいくつあっても足りません。」とか、戦前に主殺しが多かったのは住み込みで働くケースが多いためだとし「終始顔を合わせているだけでも息が詰まるのに、親には孝行、兄弟仲良く、主には忠義をつくせなんて、繰り返し云われていたとすれば、逃げ場のない状況に追い込まれて、これは逆に殺せと命令されているのと同じようなものです」などと書く。さらに、旧制高校生たちの悪行に触れ「決められた場所で年に一回秩序正しく騒ぐ成人式の若者などこれに比べたらおとなしいもんです。旧制高校生世代や、街中で機動隊に石や火炎瓶投げてた世代が、彼らを非難するのはどうもよくわからんことです。若いころに甘やかされて、おつむのネジが少々ゆるんでいたりするんでしょう。」とも書く。
著者の目的がこうしたユーモアだったのかどうかはわからないが、私にはこういう部分がとても面白かった。
最後に著者はあとがきで「戦前の少年犯罪をきちんと検証できていなかったこれまでに提出された日本に関する考察はすべて根拠のないデタラメだったと考えてもいいのではないかと愚考しています」と書く。
まったく痛快である。