小説とハウ・ツーもの

昨年の夏、本社からいらしたVIPとの懇親会に出たところ、彼がスポーツオタクで、会社に入って初めて私の卓球の知識が役に立った話を書いた(2009/8/14)。

そのとき、スポーツでは話が合ったのだが(といっても私は卓球のことだけだが)、それ以外のところでは、見事にスレ違ったことがまた面白かった。たとえば、彼は自動車に興味があるらしく、私に車の話を
振ったのだが、私は車について語れることは車種と買った値段くらいのものなので、たちまち話が止まってしまった。するとVIPは「せっかくアメリカに住んでいるのに大きな車に乗らないで何してるの」というようなことを言ったので、私は「本を読んだりしています」と言った。そこで、どんな本を読むかの話になった。

彼は、時代物小説が好きで、かなりの量を読んでいるとのことだった。ところが私が「小説はほとんど読んだことがない」と言ったのだから彼は驚いた。「えっ?小説読まないで、じゃ、何の本読んでるの?ハウ・ツーものとか好きなの?」と言ったのだ。なるほど、小説ばかり読む人から見れば、本といえば小説なのであって、それ以外の本はハウツー本ぐらいしか思いつかないのだ。そう思うと、人間の多様さが感じられて面白かった(それにしても、どこにハウ・ツーものばかりそんなに読書する人がいるというのだろうか)。そういえば、15年ほど前、出張のときに隣の席に座った同僚が小説を読んでいたので、小説を読まない私はそれをとても珍しく思って「へえー、○○さん、小説なんて読むんですか」と言ったら、あからさまにムッとして「変わってますね」と言われたことを思い出した。

ともかく、これから大急ぎで小説を読んで、何か書かなくてはならない。面白いかどうかは別にして、デタラメな話ひとつ思いつかないなんて悔しいではないか。