先日来の私の「分析」について、大学の先輩からメールが来た。
まず、ダブルスのコース取りについて。その先輩は左ききで、私の書いたコース取りのノウハウは、右と左のペアではあまりにも当然のこととして昔からやっていたので「日本の卓球界でこれを明確に言っていた人は誰もいなかった」というのは違和感があり、声高に言うほどのものではないとのこと。そういわれてみれば、私の周りに左ききの選手がいなかったために私が知らなかっただけのように思えてきた。力んで書いたのがちょっと恥ずかしいが、分析そのものの価値は認めてもらったので良しとしよう。
交差歩については、先輩も先週のプロツアーグランドファイナルの準決勝の水谷対サムソノフの全6ゲームを両方の選手について数えてみたとのこと(他人の話として聞くと、たしかにヒマだね~と言いたくなるものだ)。
その結果、交差歩を使った回数は
水谷6回
サムソノフ2回
これだけ。しかも、サムソノフの2本は、1本がバックに回り込んでストレートに打ってフォアクロスに打たれて慌てて飛びついてミス、もう一本も大きく飛びつくというより、バランスとるために軽く足を交差させただけなので、実質ゼロだったという。サムソノフほど大きければますます交差歩の必要はないということだろう。
これほどデータで示しても「交差歩のフットワークは要らない」という技術論を認めたくない卓球人がほとんどだろうと思う。これまでこの練習をしてみんな強くなったのだから、実戦で使ってなくても絶対に役に立っているはずだ、と感じられることだろう。役には立っていると私も思う。少なくとも卓球のコートで卓球のラケットを持って卓球のボールを打っているのだから、他のことをしているよりは卓球の役に立っているだろう。しかし、実戦で使う技術を練習した方がもっと役に立つだろうというだけのことだ。
いずれにしても、これを判定するためには、卓球を始めてこのかた交差歩の練習をしたことがない選手がどうなったかのデータが必要である。誰か試しにそういう指導をしてみる気はないだろうか。私の理論を証明するためだけに。
石川佳純あたりが「交差歩?んなもん知るか!」って言ってくれると話は早いのだが。しかしそれでも認めたくない人は「だから石川は世界チャンピオンになってないんだ、交差歩を練習してたらもっと強かったはずだ」と言い逃れるこができる。なにせ世界チャンピオンになってさえも「基本がなってない」と言われる世界なのだ。これがスポーツの技術論の難しいところであり、それ故にスポーツは進化することを止めないのだ(考えて正しい打法が分かるなら100年も前に理想的な打法に到達していたはずである)。