もうひとつのポイントは手首の曲げだ。
シェークハンドを普通に握ると、柄が前腕に対して60度ほど立った状態になる(写真費左)。これではドライブのときに手首を使ったとしてもボールを上に持ち上げる方向ではなくてシュート回転を書ける方向にしか使えないし、リーチも短くなる。
実はもともとシェークの人たちは、無意識に手首を下に折り曲げることで柄が前腕に平行に近くなるように持っているのだ(写真中央)。ところが卓球の指導書などにはこれは書かれていない。「自然に持てばラケットは前腕と平行になる」などと書かれている。それどころか「手首は曲げないように」とも書かれている。これを守って手首を曲げずにラケットを前腕と一直線になるようにするにはどうするか。写真右のように、手のひらの中でグリップをずらし、一本差しのように握るしかない。
以上のプロセスを経て、ペンからシェークに転向した人は異様にラケットヘッドが立ったグリップか、または「バックハンドグリップの一本差し」という、一目でそれとわかる、まるでフライパンを持ったようなグリップになるのだ。
ひとこと「シェークは手首を下に曲げてラケットが前腕に対してまっすぐになるようにする」と言われれば、どれだけ沢山の人がスムーズにシェークに転向できることか。
もっともこれはあくまで、普通のシェークのドライブをしやすいグリップにするための話である。結局はボールが入って勝てればそれで良い、いや、同じ入るならむしろ奇異なグリップの方が相手はやりにくいわけだから、こうしなくてはならないということではない。
ちなみに、もともとシェークであっても、カット型やブロック型の選手にはラケットヘッドが立っている選手が多い。言うまでもなく、フォアドライブの使用頻度が少なく、ラケットヘッドが立っていても支障がないためだ。むしろカット型はテイクバックで手首を上に曲げるのが基本だし、ブロック型はミドルをカバーする必要から、ラケットヘッドが立つのが自然なのだ。だからこそ両者ともに攻撃はぎこちない打ち方になり、それはそれで相手が反応しにくいという副産物を生み出している。
これだから卓球は面白い。