規則的フットワーク練習の落とし穴

交差歩フットワークの良し悪しについてはまずは置いておいて、今日は規則的コースのフットワーク練習の間違いについて書きたい。先月号の卓球王国に書いたことそのままだが、実例を使って示そうと思う。

言いたいことは、日本で昔からやられていて今も続いている規則的コースのフットワーク練習は、規則的であるがゆえに実戦で使わない動きになっていて、基本になっていないということである。実戦では、ボールが来た方向に動きながら打つのに対して、規則的コースの練習では、ボールがくる前に動き終わり、次の位置に移動しながら打つので、体の動きがまったく違うのだ。左右に動いてボールを打つという意味においては同じだが、やっていることがまるで違う。

もちろん、コースを決めていても実戦と同じように動けば練習になる。しかし、通常、コースを決めるということはその分だけ簡単なはずなので、したがってノーミスでラリーを続けることが練習のひとつの目標になるのだ。動きながら打ったのでは慣性のために余計に大きく動かなくてはならず、疲れすぎて続かないのだ。したがって先に動いて次の位置に戻りながら打つことで動く範囲を小さくし、長時間の練習に対応することになるのだ。

タマスから出ている柳承敏のビデオで彼の練習を確認したら、まさしく「次の位置に移動しながらのフットワーク」となっていた。フォア側への動きもバック側への動きも実戦ではまずあり得ない動きになっている。ただし、飛びつき練習だけは規則的だけれどもちゃんと実戦と同じ動きになっていた。交差歩だから当然である。
ビデオでは柳承敏はフットワーク練習を毎日1時間やると言っていたが、そのうち半分以上は実戦で使わない無駄な練習(実戦的な練習より効果が劣るという意味である)になっているので、彼にはそのままやらせておいて、そのスキに我が日本チームは100%実戦的な練習をしようではないか。

一方、同じくタマスから出ているボルの練習ビデオを見た。ボルの練習は柳承敏とはまったく違ってランダムコースの練習が多く、フォア側のボールをフォアに移動しながら打球する実戦そのもののフットワークであった。規則的な練習もあったが、その動きは柳承敏よりは実戦に近く、打球時に慣性で左足を送る打ち方だったが、それでもやはりランダムコース練習とはかなり違って、ボールが来る前に動き終わってテイクバックをする打ち方だった。

あの記事を書いてから編集部を初め何人もの卓球人と話したが、この「次の位置に移動しながら打つ練習は無意味だ(練習効果が少ない)」という結論はなかなか受け入れがたいもののようである。しかしどんなに歴史があろうとも、柳承敏がやっていようとも間違いは間違いだ。実戦とまったく違う動きは基本ではあり得ない。そのような練習は1本もする必要はなく、卓球を始めたその日から、動く練習はすべからくボールが来た方向に移動しながら打つ練習にしなくてはならないと私は考える。