年別アーカイブ: 2010

深夜の卓球場

結局この日は、午前11時から練習を始めて、5人で交替で午前0時頃まで卓球をするはめになった。私は指導に呼ばれたはずだったが、結局ピータースには一度もアドバイスを請われはしなかった。それどころか、自分の打法を解説するありさまだ。自分がいいプレーをすると、人の話を止めさせて「見たか見たか?」と言い、見てないともう一度やってみせるのだ。やはり私をコーチとして呼んだのは口実だったか。スタンとの試合では試合中なのに自分の技術の解説をする。試合中に自分に勝っている相手にそんなことをやられることほど不愉快なことはないはずなのに、スタンはよく嫌にならないものだ。人間ができているのだろう。

指導をしたショーンとカイルは、私が休んでいると「プレーしたいか?(Do you want to play?)」と聞いてくる。もしかしてこれは英語では「やりましょう」という意味なのだろうか。しかしそれがわからないので、私は質問を文字通りに解釈して「したくはない。でも君が俺とやりたいならやってもいい」と長々と答えることになる。私は最初から「今日は俺は教えに来たので卓球をしたいわけではない」と何度も言っているのに必ず「Do you want to play?」と聞かれるのだ。そうではなくて「やりましょう(Let’s play)」とでも言われればやるのだが。

ピータースは「今日はオールナイトだ」と言っていたが、さすがに0時を過ぎるとやろうという人が少なくなり、最後には卓球場の照明を落として(ピータースは小まめに電気を消す)、ピータースの20年くらい前の試合のビデオを見ながらの雑談となり、1時頃に解散となった。すっかり疲れた様子が写真から分かるだろう。スタンなんか床に寝転がっている。

ピータースは「お前らが止めると言うから俺は止めるんだ」などと言っていた。自分はいくらでもできるという。まったく敵わんジジイだ。

この後、ショーンとカイルは帰り、私とスタンは泊まった。明日は3人だ。何時までやるんだろうか。

鉄道マニア

鉄道マニアの元同僚からメールが来た。彼によれば、日本の鉄道マニアはいろんな国の模型を集めることが多いが、アメリカ人はアメリカの鉄道にしか興味がなく、ピータースも見たところすべてアメリカの模型だそうだ。ただし、アメリカの列車はバカでかいばかりで魅力がないそうだ。また、日本の模型は金属製だがアメリカの鉄道模型はプラスチックのため安価だということだ。ちょうど今週も26万円の模型を買ったばかりだそうだ。

鉄道マニア恐るべし。

鉄道模型7

ここで模型を修理したり改造したりするのだという。幸いこういう模型は高くはなく、どれもこれも10ドルもしないようなことを言っていた。

このブログの読者でひとりは確実に鉄道マニアがいるので、そのうち感想がメールで来るだろう。いろんな意味で黙ってはいられないはずだ。

鉄道模型6

二階にはさらに数え切れないほどの模型があり、いちいち箱から出して説明されてしまった。私は興味がないのだが、彼の嬉しそうな様子が楽しい。

鉄道模型5

そして使われてない模型たちがこの通りだ。古いテレビゲームが3台もあった。
「お前、遊ぶことしか考えてないだろ」と言いたくなる。

鉄道模型4

私は鉄道模型に興味はないが、ミニチュアにはファンタジーを感じるので、カメラ位置を工夫してこの街の住人になったつもりで撮ってみた。こうしてみると、かなりめちやくちゃな町並みだ。

鉄道模型

ピータースが卓球の次に好きなのは鉄道模型だろう。
なにしろ、なんと卓球場の三方の壁が鉄道模型のレールでびっしり囲まれているのだ。

レールには鉄道だけではなくてさまざまな町並みのミニチュアが所狭しと並んでいる。そして壁には無数の貨車や客車がぎっしりと詰め込まれている。

私は鉄道模型マニアではないので、鉄道模型マニアから見た彼のレベルはどんなものなのかわからないが、とにかく雑多な印象を持った。これは彼の卓球と同じで、とにかく質にはこだわらず、脈絡なくめったやたらと物を集めているのではないか。

写真をとくとご覧いただきたい。

受講生2 カイル

もう一人の受講生はカイルという。ウエスト・フロリダ大学でこちらもIT技術を専攻している20歳。卓球歴はやはり1年半だ。こちらは前日から泊りがけで来て練習していた。とても太っていてかなり動くのが辛そうだが、そのわりにちゃんと打てる。おそらく運動神経はいいものと思われる。攻撃できるときに攻撃しないので「相手が守備選手じゃないかぎり、基本的にすべてのボールを攻撃するつもりで試合をしないと攻撃すべきときに攻撃できないので、常に攻撃の準備をしているように」とアドバイスをした。

こちらも効果はあって、指導後の試合でピータースから初めてゲームを取った。

これだけアドバイスの効果があると面白い。二人とも運動神経も体もあり、技術も蓄積されていて、ただその使い方がわかっていなかったのだ。

カイルはかなりの勉強家で卓球の知識もあり、世界でもっとも好きな選手はなんと水谷隼で、次が朱世赫だという。水谷があれほどボールが遅いのに勝てるのが不思議だし、中でも、ラリー中にやるラケットヘッドを回さないでへろーんと持ち上げるバックハンドが不思議で、「どうしてあれを相手は打てないのか」と言っていた。そういう不思議なところが他の選手と違っていて好きなようだ。水谷のボールが他の一流選手より遅いのは、もともとは右利きなのを卓球だけ左でやっているからだという説を教えたら「知らなかった」と喜んでいた。

女子選手で最も好きなのは福原愛だという。プレースタイルも好きだしもちろん顔も好きだという。プレースタイルなら中国選手の方が強いのにどうして福原なのか聞くと、中国選手は無表情(stone face)なので嫌いだそうだ。愛ちゃんは困ったり喜んだりするので、そういうところがいいのだという。なるほど、そういう見方もあるのかと思った。

インド人に荻村伊智朗と田中利明の話をふっかけられるのもいいが、アメリカ南部の田舎町で水谷と愛ちゃんのファンに出くわすというのも楽しいことだ。

ブログに写真を載せると言うと、ちょっとすました顔をして「20歳で彼女募集中って書いて」と言った。フィリピーナのクォーターだという。ピータースは何かにつけてカイルのことをスモウ・レスラー、スモウ・レスラーとしつこくいじっていた。