あるセミナーに出席をしたら弁当が出たのだが、この弁当がやたらと天然ものにこだわっていて可笑しかった。保存料や合成着色料を使っていないことを強調していた。
自然のものが安全で人工的なものが危険だというのは何の根拠もない妄想である。
自然界にも毒はあるし人工的で安全なものもあるにきまっている。70年代のある時期からこういう考え方が流行しだしただけのことだ。「いいから腐らないように保存料入れろよ」と言いたい。
もっとも、何でも大量に摂取すれば体に悪い。山本弘の本によれば、16世紀の医師パラケルススは「あらゆる物質は毒である。その用量の違いだけが、毒と薬の違いをもたらす」という名言を残しているそうだ。水も塩も砂糖も量が多くなれば有害になる。醤油だって一度にコップ一杯飲めば死ぬ危険性があるしコーヒーも75杯、紅茶も125杯飲めばカフェイン中毒で死ぬ。クレヨンも幼児が150g食べれば致死量だそうだ。水ですら過度に採れば水中毒で死ぬのだ。過度に摂取すれば何でも毒なのであり、問題はその量なのだ。だから量を明確にしないで「焦げを食べると癌になる」などというのは何の意味もない。よくよく調べるとそれが「毎日10トンを何年間も食べれば」という話だったりするのだ(だいたい、何にせよ、それだけ食えば胃が破裂して死ぬ)。
そして自然食信者は、量について考察することなく「保存料」と「合成着色料」を目の敵にする。適度な量ならこれらは何の問題もないのだ。多く採ったときに問題が起こるのも気になるというなら、もはや安全なものはない。なにしろ水や酸素でさえも採り過ぎれば毒なんだから。
とにかく食品の安全性についいては、明確に医学界で認められたもの以外は信用しない方が良い。こういうくだらない信仰に神経を使うのは本当に時間の無駄、人生の無駄である。
それにこの弁当、「注意あさりと蟹が共生しています」とも書かれているが、ギャグなのだろうか。共生どころかどちらも死んでいるし、それの何を「注意」するのだろう。バカバカしい秀逸なギャグだと思っておこう。