「就活難航で大学生の自殺者が倍増」

2,3日前にネットでこのような見出しの記事が出ていた。「就活失敗による大学生の自殺2倍に」「自殺13年連続3万人超」「就職失敗が急増」というサイトもあった。

あいかわらずのインチキぶりである。これを見ると、なにかとんでもなく状況が悪くなっていると誰でも思うだろう。そう思わせるためにそういう部分だけを選んで見出しにしているからなのだ。

記事をよく読むと、確かに「就職失敗」が原因の自殺は2倍になっている。
平成10年は46人で、平成9年の23人の2倍になったというのだ。大学生以外を含めた「就職失敗」が原因の自殺者は354人から70人(20%)増の424人である。

一方、「借金関係」の項目を見ると、2640人で前年の3261人の19%減になっていて、621人も減っている。「就職失敗」と「借金関係」を含んだ「経済・生活」全体としては前年の8377人から939人(11%)減って7438人となっている。

それでは自殺数全体としてはどうかというと、31,690人で、前年から1155人(3.5%)少ないのである。

つまり、自殺数は全体でも原因別でも多くの項目で前年より減っているのに「就職失敗が原因で自殺した大学生」、それもわずか23人が46人に増えたことだけをとりあげて「倍増」と見出しに使っているのだ。

マスコミは常にこのようにネガティブなことを取り上げて騒ぐ。それは不安や恐怖の方が人々の注目を得られ、「売れる」からだろう。何の根拠もなく青少年の犯罪が凶悪化しているというデタラメを書くのもそのためだ。

景気というものは文字通り人々の気持ちを反映するものだが、不況の原因を作っているのはマスコミにもあるのではないだろうか。戦争中の大本営発表のようにウソまでは書かないにしても、せめて事実を歪めるような印象操作はやめてほしい。むしろ逆に良い状況をとりあげた印象操作をした方が景気は良くなることはまちがいない。ためしにどこかの新聞がそういうことをやってくれないだろうか。

私なら今回の見出しは「自殺者数、1155人減」と書くだろう。23人しか変動していない項目をとりあげて「倍増」と書くなどという芸当はとてもできない。