ポーカーゲーム

学生時代のギャンブルということでは、ポーカーゲームがあった。私はたまたま喫茶店などにあるテレビゲームでのポーカーをお金を使わずにやれる環境があって、そこである実験をしたのだ。

まずルールを説明しよう。最初に5枚配られて、変えたいカードを指定して変えて、ワンペアとかスリーカードとか役ものが出来ればそれに応じた点数が入るルールだ。しかしこれだけではあまり面白くない。醍醐味は次の勝負だ。役が出来ると、次の1枚のカードが7より大きいか(ハイ)小さいか(ロー)を賭けて、何回でも当たるごとに倍になり、外れるとすべて失うハイ&ロー勝負という仕組みがあり、それがこのゲームの醍醐味なのだ。だからワンペアという最低の役でもこの勝負で3回当たれば8倍の点数がもらえるという仕組みだ。ちなみに7が出たらどちらに賭けていても外れだ。みんなはこのハイ&ロー勝負に異常に熱中していて「ハイハイと来たから次はローだ」とか「ツーペアのときはローの確率が高い」とかさまざまな「法則」を探そうと血眼になっていた。

そこで私の興味は、このハイ&ロー勝負のカードが本当のカードゲームのようにランダムに出ているのか、それともコントロールされているのかだ。ランダムに出ているのなら、こちらの選び方によっては運がよければ勝つかもしれないが、あらかじめ勝敗が決められていて、出るカードはその勝敗とつじつまを合わせているだけなら考えるだけ無駄だ。

そこで私は巧妙な方法を思いついた。このゲームは、一応は本物のカードゲームを模しているので、一回の勝負中には同じカードは二度と出てこない。だから、もしハイ&ロー勝負のカードが本当にランダムに出ているのなら、最初に配られるカードを記録していれば、ハイ&ロー勝負のときのカードのハイとローの確率がわずかに有利に予測できるはずなのだ。

たとえば極端な例だと、5枚配られたカードが5枚とも7より小さく、5枚を総入れ替えして配られた5枚がまた5枚とも7より小さかったとすると、52枚のカードのうち、7より小さいカードをすでに10枚も見たわけだから、残りは7より大きいカードが24枚、7が4枚、7より小さいカードが14枚となり、ハイに賭ければ勝つ確率が24/42になって50%を越えるのだ。こういうケースだけ何百回分も集めて勝率を計算すれば、必ず勝率は50%を越えるはずである。

このように、配られたカードのハイ&ローのすべてのケースについて表を作っておいて、勝負をしながらその表に勝ち負けを記録していった。これで何日か統計をとったところ、見たカードにまったく関係なく常に勝率は50%以下だったのだ。したがって、ハイ&ロー勝負のカードはランダムに出ているのではなく、こちらがどちらを選ぼうとも勝敗が決まっているということであり、こちらの自由選択は見せかけだけのものだということだ。これでは勝負をするだけ無駄である。

それを確認したことをもって私はゲーム機に勝ったことにして、その店に通うのを止めたのだった。もちろんお金は1円も使っていない。