Nさん in 場末のバー

今週も営業の方と一緒にお客さん回りをしてきた。
今回はまた別の営業の方で、Nさんという方と一緒だった。

仕事を終えて電車の中でいろいろと話したのだが、Nさんは「歳をとったせいか最近、演歌が妙に心に響く」と言う。彼は41歳であり、それまではJポップばかり聞いていたのだが、最近は美空ひばりの「川の流れのように」とか「愛燦燦」などが、なんて素晴らしい歌なのだろうかと思うという。

私は演歌の良さはわからないし、他人もそうだと思っていたので、将来、私より上の世代がいなくなったら演歌は消滅するのではないかと思っていたのだが、完全な読み違いであった。

彼はあまりにそれらの曲がよく、会社帰りに一人で家の近くの飲み屋によってカラオケで歌うのだという。ちょっとまて、一人で?そう、一人でなのだ。そのバーは、35歳のバツイチ子持ちの巨乳のママさんがいて、明らかにそれを狙っている常連たちが入り浸っているのだという。そのバーは近くに駅もなく、辺鄙なところに有るのにもかかわらず、タクシーで乗り付ける客もいるという。ママさんを狙って常連がクダを巻く場末のバー。そういう情景はドラマやマンガではよくあるが、よく考えると本物を見たことはない。そういう、絵に描いたような店が実際にあるというのは嬉しい。

Nさんは、そこにときどき寄っては誰とも話さずに一人で黙々と2,3曲歌って帰るのだという。常連と知り合いでもないしママさんにも興味はなく、ただただ演歌の素晴らしさを体に染み渡らせに通うのだそうだ。そのうち、Nさんに連れて行ってもらおうと思っている。