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丁寧に負けるとはこれいかに

町内の卓球クラブに行き、クラブ員の女性とオリンピックの話になった。
愛ちゃんの試合の報道で「福原愛選手は丁寧に負けました」というのを聞いて
「丁寧に負けたってどういう意味?」と思ったそうだ。荒くやって負けたとか、簡単に負けたとか競って負けたとかならわかるが、丁寧に負けるとはいったいどういう状態を指すのかというわけだ。あかたも「負ける」という目的に対して計画通りきっちりとミスをして万全を期して負けたとでも言わんばかりだ。

卓球をしているものなら「丁寧」を見ても今さら何も思わないし、ごく一部の「困ったオヤジ」以外は駄洒落にするのもはばかられるが、一般の人から見ればこれが自然な反応なのだということにあらためて気づかされ、なおかつ不条理ギャグともいえる「丁寧に負ける」という表現がなんとも可笑しかった。

「ながら見卓球」

ヤフーの卓球のスコア速報ページに、興味深いリンクが張ってあった。
「卓球女子団体決勝を識者と観戦!ながら見チャンネル」と書いてあるので何かと思ったら、二人の男が女子団体決勝をテレビを見ながら語り合うという面白いものだった。
http://www.youtube.com/watch?v=hOPtt_u1RPo&feature=plcp

片方は荻村伊智朗の伝記『ピンポンさん』の作者である、ノンフィクションライターの城島充。リアルタイムで聞いたら面白かっただろうなと思う。

日本の卓球の限界は、福原対李の試合に表れていた。福原は第2ゲームの8-9から空恐ろしいバックハンドスマッシュとレシーブスマッシュを3連発して、このゲームを11-9で獲った。金メダリストにここまで迫った選手はいないだろう。素晴らしい技術だ。しかし、我々はこれを賞賛してばかりいてはいけない。この結果は福原の卓球スタイルの限界そのものを表しているのだ。どんな選手でも、低いボールに対してスマッシュを入れ続けることはできない。ボールがゆるく高かった1950年代をのぞけば過去にそのようなやり方で世界チャンピオンになった選手はほとんどいない。あえていえば1993年エーテボリ大会の玄静和だろう。日本の伝統はスマッシュだ、という物言いは、それができた古き良き時代の錯覚であり、現代卓球ではあまりにも難しい戦術なのだ。

中国の女子選手たちはスマッシュをほとんど打たない。日本選手よりずっと体が大きいのにバックにほとんど回り込まず台から十分な距離をとり両ハンドで回転量の多いドライブを打つ。だからミスをしない。日本選手は体も小さいしドライブの球威がないから、どうしても台に近づいてスマッシュをしないと点を取れない。現状の日本選手の実力では、リスクのある卓球にしか可能性はないのだから、そのようにやるしかない。しかしスマッシュでは限界がある。今後は、体が小さくてもスマッシュではなく、ドライブを中心としそれで相手をぶち抜く球を打てるように筋力を鍛えるべきだと私は考える。日本の特徴はスマッシュだなどというノイズを聞くべきではない。

まあ、それでも中国から2ゲームをとり、韓国を一蹴したシンガポールに3-0で勝ったのだから十分な気もするが、中国を倒すことを目標にした場合は、どうしてもこのような話になる。

ドーハの悲劇

サッカー界では「ドーハの悲劇」などと言われているが私は知ったことではない。

卓球界でドーハといえば、日本女子が中国に肉薄した最後の試合だ。

忘れもしない2004年世界選手権ドーハ大会(忘れてたけど)。日本はグループリーグを1位で抜けて、決勝トーナメント1回戦で中国と激突した。日本は梅村、藤沼、そして15歳の福原だ。対する中国は王楠、張怡寧、李菊の非道ともいえる面々だ。

日本 2-3 中国
梅村 2-3 王楠 ○
福原 0-3 張怡寧○
○藤沼 3-2 李菊
○梅村 3-2 張怡寧
福原 0-3 王楠 ○

このときの藤沼と梅村の卓球は、中国指導陣から「理不尽なまでの速攻」と評された。
これ以後、日本女子で世界選手権、オリンピックで中国選手に勝った者は一人もいない。リスクのある卓球をしなければ中国に肉薄することは出来ない、しかしそういう卓球では結局は勝てないのだ。「日本の伝統は速攻」などという妄想はやめなくてはならない。

今日は祭りだ

さあーてと。
コンビニでスポーツ新聞を5部買った。菊水とつまみも買った。
あとはテレビで楽しく女子団体決勝を観戦するだけだ。

日本女子が団体で中国に勝ったのはいつのことだっただろうか。
調べてみたら、1971年名古屋大会の決勝なのであった。41年前だ。

どれ、楽しいので結果を書いてみよう。

日本    3-1 中国
○小和田敏子  2-0 鄭敏之
○大関行江   2-1 林慧卿
小和田/大場 1-2 林/鄭○
○小和田敏子  2-1 林慧卿

まいったか。
ちなみにこの大会で林と鄭は女子ダブルスで優勝し、女子シングルスでは二人で決勝を争い、林が優勝している。林はダメ押しに混合ダブルスでも張燮林(!)と組んで優勝している。まったくなんてアマだ。
小和田敏子は1969年ミュンヘン大会の女子シングルスチャンピオンだ。

今夜は菊水を浴びるほど飲もう(1缶しかないけど)。

女子の決勝進出

会社に行ったら、何人もから「見ましたよ」「おめでとうございます」「よかったですね」などと、まるで私が勝ったかのようにみんなからお祝いの言葉をいただいた。
「いやいや。それほどでも」なんて私が謙遜してどうする!平野、福原、石川に失礼と言うものだ。

2008年には、世界選手権広州大会で韓国に勝って、北京五輪で韓国に2連敗してメダルを逃したのだった。
2010年には、世界選手権モスクワ大会で韓国に勝ったが、今年のドルトムントではまた韓国に負けてベスト8だった。ラストで金キョン娥に8-4から負けた石川は、眠れない夜を幾晩過ごしただろう。でも、あそこで負けたからロンドンで勝てたのかもしれない。あそこで泣いたからロンドンで笑えたのかもしれない。

ああ。勝つってこんなに楽しいことだったんだ。

男子団体

男子団体は残念だったが、香港が異常に強かった。ラストの丹羽の試合なんか、フォア前に浮いたボールを丹羽がクロスに飛び込んでバック側に打ったら、唐鵬のヤロ、なんとバックサイド深くに待っていてフォアハンドでガバーっとストレートにカウンターだもの。おいおい、どこにいるんだよ唐鵬。そんな戦術ありえないだろ。っていうかそれ、戦術なのか?

まるで野球のバッターの正面に立ちふさがってバットから直接グラブで受けて「ハイ捕りました」ってなことじゃないか。

岸川が自ら認めているように特に受身だったように見える。確かにもっとリスクを犯す卓球をすれば勝ったかもしれない。しかし、そもそもリスクを犯して勝つことは誉められたことではないのだ。リスクを犯さなくても勝つぐらいの地力をつけなくては、結局は安定して勝つことはできない。いちかばちかの卓球ではダメだ。岸川は、危ない卓球をしなかったことを悔いるのではなく、安全にやって相手をヒネるような卓球を目指して欲しい。日本人は「肉を切らせて骨を絶つ」みたいな玉砕戦法が好きで、そういう論評をしがちだが、それでは絶対にだめだ。中国のように徹底した安定志向でなおかつ威力を出さなくてはならない。

丹羽もラストで負けてしょげていることだろうが、気にすることはない(気にしろったって気にしないだろう。そこがいいところだ)。ボルだってクアランプールで松下に負けたのだ。負けても表情ひとつ変えない丹羽が本当に頼もしい。鉄の精神力を持った侍だ。

女子団体の偉業

女子団体で銀メダル以上が確定した。
素晴らしい。これでこれまで散々大事なところで負けてきた悔しさが晴れたことだろう。
高田、梅村、羽佳、藤沼、福岡、藤井ら、後一歩のところで負けて悔し涙に暮れたかつての選手たちのことを思い出す。

女子団体の決勝進出は、五輪ではもちろん初めてだが、世界選手権でみても1983年東京大会で韓国に勝って決勝に進んで以来のことだ。
引退寸前の王越古や、出産後復帰のリ・ジャウェイはともかく、大エースである馮天薇
を福原が叩き潰したのはすごい。

しかーし。しかしである。本当の敵はもちろん中国だ。中国には馮天薇どころではない奴らが3人揃っているのだ。史上初の銀メダル獲得で喜んでいられるのは今のうちだけだ。こういうときは中国に負けてはじめてその悔しさに気づくのだ。

おい!負けてから悔しがるくらいなら今から悔しがれ。
負けるのを待つな。今、負けたと思え!(荻村伊智朗)

早すぎる店

家の近くに食堂があるのだが、あることが気になってあまり行っていなかった。店に入ると席に座ってすぐ、あるいは座る前に「何にしますか?」と聞いてくるのだ。そして一年中いつ行っても「マグロの中オチ、いいのが入ってますよ」と言うのだ。

震災後、店の名前が変わったのでもしかしてオーナーも変わったのかと思い、今日行って見た。内装は見事にきれいになっていて「おお」と思ったが、店員は同じで、席に座ると同時に「何にしますか?」「マグロの中オチなんかどうですか」と聞いてきた。

おもてには「うまい・はやい」と書いてあるが、店員のオーダーまで早いのはあまり嬉しくない。

さあ、女子のドイツ戦だ。イバンチャンに気をつけろ!

無気力試合

バドミントンで無気力試合で失格になった選手たちがいた。
サッカーでも無気力ではないが意識的に引き分けた試合があるし、実は卓球でも1991年幕張大会で、中国と当たりたくなくてわざと負けたチームがあった。

わざと負けたのは見ればわかるほど明らかだから、選手たちは「やっても問題ない」と思ってやったのだ。バレたら処分されると思っていれば、調子が悪いふりの演技をすればよかっただけである。わざと負けたのは、無気力どころか、次の試合で勝ちたいからこそ全力で考えた作戦だったのだ(野球の敬遠と同じだ)。

私は、選手たちを批判する気にはなれない。批判されるべきは、そのような作戦を許したルールの方である。わざと負けるのが何の得にもならないような試合方式を考えるべきなのだ。どうしてもそのような試合方式が考えられないのなら、選手はただ強くなるだけではなくて、一生懸命やって負ける演技力が求められることになる。現状のルールが言っているのはそういうことなのだ。

週刊文春

週刊文春に水谷の記事が載っていた。

補助剤問題だ。ルールを守っているのが日本だけなのだから日本もさっさと補助剤を塗るべきと思う。もちろん理想的にはITTFが後加工禁止ルールを廃止にするか、または破壊検査でもなんでもして検査を強化するべきだが、それをする気がない以上、答えは一つだ。有機溶剤の時には健康被害を避けるという大義名分があったが、補助剤に関してはそのような大義名分はない。破っても誰の迷惑にもならず、なおかつ違反を検出できないルールで、守っているのは日本だけなのだから、暗黙の了解で使うべきなのだ。卓球メーカーもバンバン販売する。名目は「ITTFでは禁止されています」とかなんとか書く、あるいは何も書かない。それで誰も困らない。ITTFが日本にだけ文句を言ってくるわけもない。

国道で一人だけ法定速度を守って走り、他の車が不正だと警察に訴えるようなバカなことはもうやめたらどうだろうか。それでも水谷や岸川や吉田の青春が返ってくるわけではない。選手は趣味で卓球をしているわけではない、人生をかけているのだ。

日本選手よ、団体戦は補助剤を塗れ!(かえって調子狂うか)

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