私はもともと物忘れが激しい。いつもあらぬ妄想をしているためかもしれないが、それを差し引いても記憶力が良い方ではない(だから地理、歴史などの成績はめちゃくちゃだった)。
しかし、これは悪いことばかりではないのだ。忘れる能力が役に立つ場合もある。文章を推敲するときだ。なにしろ記憶力がないので、自分の書いた文章をいつも初めて読む読者のように読むことができるのだ。さすがに同じ行を何度も読むと覚えているのでどこがおかしいのかわからないが、そういうときはちょっと遠くから読むと自分でも何を書いたかすっかり忘れているので、たちどころに「くどい」「わかりにくい」などということがわかるのだ。他人の書いたものにケチをつけるつもりで読むのだからこれは楽である。
嫌なことも多分忘れているんだろうと思うが、なにしろ覚えていないので忘れたかどうかもわからない。