ホンダ創業者である本田宗一郎は、問題に直面して落ち込んでいる若者に言ったという。「お前、何歳だ?27歳?そうか。俺はもう50だ。もし27歳に戻れるなら俺は500億払うぞ」と勇気づけたという。
こういう話には私はある一定の感動は覚える。と同時に「そんなこと言ってもなあ」という気持ちにもなる。私も20代のころ、そういう類のことを年配の人に言われたり読んだりしたものだが、何か素直には受け取れなかった。若くてよいことばかりではない。恥ずかしながら私は若い頃は死が恐ろしく、十分に人生を経験する前に死ぬことの無念さが気になっていた。しかも若ければ病気になったときの進行も早い。60、70になれば十分生きた気がするだろうし病気だって進行は遅いだろう。早くその年まで生きて安心したいと思っていた。
加えて「若さは宝だ」と押し付けられても、現実に金はないし能力もない。自分には何かあるはずだ、本気出していないだけだ、という思いはあってもあんまり何もできないし本気も出せない。出す対象も思いつかない。私の場合なら、試しに絵や漫画や文章を書いてみても我ながら箸にも棒にもかからない。
実際、50を目前にした今の方がやりたいことは何でもできる状況にある。金はあるしやりたいこともやれることも見えてきたし平均年齢の半分は生きたのでこれから何が起こってもそう不幸だと思わなくて済む。若くて有利なのは体力ぐらいのものだが、富士山に走って登るんでもあるまいし、体力が必要なことでやりたいことなどない。今更また20代に戻されて幸運な偶然に出会わず、卓球王国での連載もできず、病死などしたらたまったものではない。500億払うから(ないけど)このままにしておいてほしいと思う。
そういうわけなので「若さは宝だ」などと言われてピンとこなかったり引け目に感じたりしている若者たちがいたら、気にする必要はない。ほとんどの若者は何もできないし人生つまらないなあ、他の人だけ楽しそうだし若いのにやるべきことをやってない気がするなあと思っている。大丈夫。それが普通だ。とにかく病気と交通事故に気をつけて死なないようにしてほしい。
そして50になれば、50年の経験と思い出という宝が舞い込んでくるのだ(年金か?)。それでは90歳になればもっと良いかと言われれば・・・微妙だ。経験していないのでわからない。
感動的な美しい文章でした。全ての若い人に読んでもらいたいです。
お褒めをいただき、ありがとうございます。
これまで文章を「美しい」とまで褒められたことはありませんでした。
嬉しいです。
若ければ病気になったときの進行も早いとありますが、本当に若ければ病気の進行は、早いんですか?
一般にそう言われているのでそうかなと思っていました。