年別アーカイブ: 2013

ミッシェル・ブロンデルとの出会い

無事に全日本での仕事も終わり、自宅に帰ってきた。全日本では思わぬ出会いがあった。二日目の夜に、今野編集長の知人でフランスのナショナルコーチであるミッシェル・ブロンデルと夕食を供にしたのだ。その焼肉屋に私だけちょっと遅れて行ったのだが、初対面のミッシェルはなんだか笑いっぱなしでロレツが回らないような話し方なので「それは酔っているのかもともとなのか」と聞くと(失礼なことを聞いたものだ)「酔ってない、もともとだ」と言う。さすがにコーチをするときはこうではないらしいがプライベートではいつもこうなのだという。

今野さんとどういう関係なのか聞くと、ミッシェルは荻村伊智朗にあこがれて80年代に青卓会にコーチングの勉強をしに来日し、今野さんとは荻村に誉められたりいじめられたりの苦楽を供にした仲であり、今野さんを実の兄のように思っていると語った。卓球王国の誌面ではフランスのコーチとしていたって冷静に紹介をされているが、完全に「一味」「その筋の者」なのであった。

ミッシェルは荻村が亡くなる直前、パリを訪れた荻村とジャズバーで朝の5時まで語らい、荻村が話しっぱなしでジャズを聴くヒマもなかったという、感激のしどころがよくわからないがしかし魅力的な想い出を語ってくれた。そこから音楽の話になり、わかったことは、ミッシェルはパンクロックの大ファンで、中でもクラッシュの大ファンであるということだ。私もクラッシュの大ファンなので一気に盛り上がり、焼肉屋なのに二人でLondon’s Burnningを歌うに至った。歳が私より二つ下の47歳だということも音楽の好みが近い原因だろう。可笑しかったのは、ミッシェルは「荻村はパンクだ」と言ったことだ。「荻村はパンクなんか嫌いだったはずだ」と言うと、精神がパンクなのだと言う。荻村が1954年にロンドンでイギリス人のイジメを受けながらそれを跳ね返して優勝したことをまるで「卓球・勉強・卓球」を読んだように詳しく知っていて、それがパンクだと言うのだ。なるほどと思って話を聞いていると、水谷もパンク、丹羽もパンク、今野さんもパンクだと言うではないか。どうやらこの人、自分が好きなものはすべてパンクであることにしているようなのだ。ミッシェルは80年代に相撲を題材としたドキュメンタリー映像作品を作っており、テレビで放映されたことがあるという。「相撲もパンクだ」と言うので、どこがパンクなのか聞くと、出羽海部屋を5週間取材したときに、常の山という力士が、日中激しい稽古をした後、毎晩のように酒を飲み歩き、ろくに寝ないで毎朝4時から稽古をするのだそうで「これこそがパンクだ」という。そういうことか・・・。映画監督の小津安二郎もヴィム・ヴェンダースもパンクだと言うのだから完全にメチャクチャである。注文をしたワインがグラスにちょっとしか入っていなかったので下手な日本語で「ちょっとこれ少ないんでしょうー」といちゃもんをつけたのも当然パンクなのだろうやっぱり。

ともかく、卓球界でこれほどパンクが好きな人に出会ったことは、高校時代のチームメート以外には記憶にないのでとても嬉しかった。今から世界選手権パリ大会が楽しみだ。卓球そっちのけでパンク話で盛り上がりそうである。

全日本を取材

今日から会社を休んで全日本に来ている。豚野郎の話ばかり書いているわけではないのだ。本来ならば速報でもしたいところだが、それは編集部にまかせるとして、今回はビデオ撮影のお手伝いという名目の参加だ。決勝のテレビ放送で背景に映るかもしれない。

本革

新幹線のカタログ紹介は「面白い」という人がいたかと思えば「あれが一番つまらないので止めて欲しい」と言う人もいて、いちいち聞いていられないのでとりあえず書くことにする。

革製品のページで「牛革」とか「羊革」とか「馬革」とかが載っていたのだが、その中に「本革」というのがあったのが目を引いた。他のものは動物の種類を書いてあるのにこれだけが本物の革だというのだから不思議ではないか(ここまで田村に話すと「人間の皮ってことか」と不安気な顔で言ったことを付け加えておく。なんで新幹線の通販がナチスの真似事をせにゃならんのだ。さすが変わり者の名をほしいままにしているだけある)。

それで製品説明をよく見ると、そこには「豚革」と書いていたのであった。どうしても「豚」とは書きたくなかったものと見える。たしかに、豚とえいば「豚箱」とか「豚野郎」とかあまり良い印象はないのだから仕方がない。死んで革になってまで差別されるとは豚の人権はどうなっているのだろうか。ねえかそんなもん。全日本が始まったというのに、よりによって豚野郎の話というのもなんだが。

『卓球ラウンジNOA』視察

昨年、仙台市内に新たに卓球場ができたのを聞いていたので、大雪の中視察に行ってきた。視察といえば聞こえはいいが、要するにひやかしである。しかし、今日の予定を聞いてみると5時から6時までの1時間だけ空いていてあとは教室やらフリーやらで埋まっているという。素晴らしいことだ。

台は4台もあり、二人の生徒さんが指導をされているところだった。卓球場が繁盛をしているのを見るだけで私は楽しいのだ。

体罰について

どこかの高校バスケ部顧問の体罰が問題になっている。卓球界でも体罰をする学校があるという話はチラホラ聞くし、親が子供を叩くなどというのは当たり前のようによくある。

テレビでは「教育基本法で体罰が禁止されている」と言うが、それは時速40キロの制限速度のようなもので、そもそも守っている人の方が少ないルールである。問題は体罰の有無ではなくてその程度にあることは明らかだ。平手で30発も叩くのはやりすぎだし、拳で殴るなどは1回でもダメだろう。しかしその許容程度を客観的に決められないから安全策として「体罰はダメ」となっているにすぎない。

体罰が教育に効果があるかどうかはわからない。そもそも何を持って教育されたと判断するのかもわからない。仮に教育の効果がないとしても、私はある程度の体罰なら容認する。現場では暴力で生徒の行動を制限する必要がある場合もあると思うし、先生も人間なのだから腹が立って手を出したくなるような生徒もいるだろうからだ。

なお、荻村伊智朗は体罰は絶対にしなかったそうだ。体罰はしなかったが、言葉の暴力が凄まじく「これなら叩かれた方がマシだ」と思うほどの全人格否定を延々とされるのだという。その荻村が『卓球クリニック』(1990年ヤマト卓球刊)という本で、指導者の体罰が嫌だという読者の質問に対して「ネチネチといじめまわされるよりは、スカッとなぐられたほうがいいというふうに考える場合もあるでしょう。また、暗い顔をしてブツブツと口の中で生徒の悪口ばかり言っている雰囲気よりも、スカッとなぐってあとはニコニコというほうが思い切ってやれるかもしれません。」(P196)と答えているのだから可笑しい。

自分自身のことはどう評価していたのか聞いてみたかった。

無残なり編集長

先の補助剤を取り上げたテレビ番組だが、実は卓球王国の今野編集長のところにも取材が来ていたのだという。「テーマがテーマなので、ボツになるかもしれない」とは言われていたそうなのだが、蓋を開けてみればボツになったのは補助剤ではなくて、今野さんだったわけだ。

テレビ局が来るというのでせっかく居室を片づけ(たかが知れているとは思うが)、カメラの前で30分も話したのに放送は1秒もなし。もちろん局からは何の連絡もない。

この悔しさをはらすためには、逆にテレビ局に取材に行ってさんざんインタビューしたあげくにボツにしてやるしかないと思うがどうだろうか。もちろんそういう仕事はユウにやってもらおう。がんばれユウ。

偉いぞフジテレビ!

12月30日に放送されたフジテレビの『とくダネ!発 ディレクター魂~2012最後のスクープ~』が素晴らしかった。水谷の補助剤問題の告発が取り上げられているのだ。

冒頭、水谷により補助剤問題が語られると、補助剤の有り無しラケットに鉄球を落とす実験映像となり、跳ね返る高さに20%の差があったと解説された。ピンポン球ではなくて鉄球で実験を行ったのは、ピンポン球では差が出なかったからだろうな。また、到達する高さに20%の差があったことをもって「跳ね返る力が20%違う」と解説したのは間違いだ。言うまでもなく到達高さと初速は比例しないからだ。

カメラは中国に飛び、杭州でのITTFワールドツアーグランドファイナルの取材となる。これが素晴らしかった。愛ちゃん、石川に水谷の不正告発について質問を浴びせるのだ。30時間も張り込んでインタビューしたと言っていたが、普通のプレスのインタビュー用の壁紙の前だったので、単に二人の試合がなかったか、30時間観光でもしていただけだろう。それは良いとして、当然のことながら二人とも当惑し「それについては何も言えません」と言葉を濁した。取材陣はその後、なんと馬琳に「ブースターが使われていることは知っていますか?」と聞いたのだ。間髪入れず「知りません!」と答えてプイッと去る馬琳。自分に言い聞かせるようにうなずきながら答えたのが可笑しかった。「知りません」という否定文をうなずきなら話すとはなんと皮肉なことだろうか。

その後、丁寧に同じ質問をすると、それまで笑顔だった表情があからさまに曇って固まった後「わかりません」と答えるのだ。その表情の変化の瞬間をスローで繰り返し再生するエグさはさすが民放だ。「中国人記者たちもなぜか冷ややかな視線に」と笑顔が消える様子をこれも繰り返し再生していたが、笑顔の方は明らかに別の撮影の挿入だった。こういうインチキはあったものの、補助剤そのもののインチキに焦点を当てるためであれば何でもよい。

その後映像はスタジオに切り替わり、補助剤を塗ったラケットと塗っていないラケットを持ってきてゲストがラバーを触り「全然違いがわかりません」と言っていた。・・・分かるわけがないし、「そんなにベタベタと指でラバーを触らないで」と自分が使うわけでもないのに思ってしまったのは卓球マニアの性である。さらに、シャララの「不正をしている選手がいるのは分かっている」という例のコメントもデカデカとボードで紹介されていた。

ともかく意義深い番組であった。IOCの人にぜひとも見てもらいたい。この調子で大問題にして、パリ大会ではラバーを剥がして検査せざるを得ないようにしてもらいたい。偉い、偉いぞフジテレビ!もっともっとやれー。

2日に実家に帰ったら「卓球ではインチキやってるやつがいるようだな」と卓球に興味のない父から言われた。テレビの力は大きい。ちなみにそこで私は「検査できないんだから日本人も塗ればいいんだ」と言うと「そんなことはない、ルール違反はダメだ」とモメたことを付け加えておく。補助剤問題は帰省した中年親子にさえ軋轢を生み出しているのだ。

Page 14 of 14« 最初へ...1011121314