四国の家庭料理の店

一昨日、出張で東京の青物横丁というところに泊まった。例によってひとりで飲み屋で夕食をとろうとホテルの近くの繁華街を見て回った。

基本的にどんな店でもいいと思っているのだが、いざ入るとなるといろいろと迷ってしまう。入りたいのは、まずチェーン店ではないこと、小じんまりしたところ、和風なところだ。なんだかものすごく簡単そうな条件だが、どこもかしこもバカでかい客席があったり、イタリアンだかエスニックだかの特徴を出している店ばかりでなかなか普通の店が見つからない。

それで目についた「四国の家庭料理」という看板に惹かれて入ってみた。ドアを開けた瞬間に後悔した。広い店内で男女が大騒ぎをしていたのだ。すぐに「イラシャイマセー」と日本語の怪しい東南アジア系の店員が寄ってきた。これで四国の家庭料理出すのか?と思う間もなく「婚活パーティーで飲み放題3,500円ダケ、ドウデスカ」と来た。

婚活パーティーに紛れ込むというのも面白そうだと思ったが、さすがに迷惑になるだろうから止めておいた。書いとけよそれなら。

結局、別の通りにある、看板が異様にそっけない飲み屋に入ると中もそっけなく、客はひとりもいなかった。流れていた曲はジョージハリスンのライブだった。有線放送ですかと聞くと『バングラディッシュコンサート』のCDだという。渋すぎるだろそれは。

当然、持っていった本を読むのは止めにして音楽談義となった。ジョージハリスンの曲がかかっていたのでビートルズのファンかと思うとそうではなく、ローリングストーンズのファンだという。ただしロン・ウッド時代のストーンズが好きで、ミック・テイラー時代のストーンズはイマイチだそうな。

そう言うと店主は「ディランがクラプトンに提供して要らないと言われてロン・ウドがもらった曲」だという『セブン・デイズ』という曲を聞かせてくれた。

当然ディランも好きらしく、ディランが手本としたウディ・ガスリーも好きだという。ウディ・ガスリーを好きだという人間に会ったのは初めてだ。知らない店には入ってみるものだ。

「音楽は何でも聴く」と言うだけあってパンクも日本のロックも聴くようで、中でも「吉田拓郎」「サディスティック・ミカバンド」「キャロル」にご執心のようであった。フォークも好きだと言うので、念のため「かぐや姫」「さだまさし」は?と聞くと無言で頭の上で手を振られた。

音楽談義の合間に先ほどの四国の家庭料理店の話をすると、なんと知っていて、やはりチェーン店が嫌いでそこに入ってカレーライスを食べさせられてこの店に流れてきた客がこれまでにも何人もいたそうで、私が典型的なそういう客のひとりに過ぎないと知って少しガッカリしたのであった。

あきれたことに、その四国の家庭料理の店の婚活パーティーは、ここ十年ほどずっとなのだそうだ。とほほ。看板変えろよそれなら。

四国の家庭料理の店” への 2 件のコメント

  1. 出張、お疲れ様です。青物横丁とは…いつもながらシブいところにお泊まりになっていますね。下手をすると、東京人でも京急沿線どころか、何処だかもわからないところですよ。泊まる理由は…変わった酒場に行く為なのでしょうか?吉田拓郎世代はかぐや姫やさだまさしは受け入れないんでしょうね。もちろんアリスも。

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