台湾で泊まったホテルのフロントに、とても大きな絵画が飾ってあったのだが、その異様さが嫌がうえにも目を引いた。
明るい日差しの中で家族だか友人だかがピクニックをしている絵なのだが、さっぱり楽しそうではないのだ。楽しそうではないどころかむしろ悲しそうである。
写実的でもないし細かく描き込んでいるわけでもなく、楽しくも美しくもない。手前の犬など色が人物のズボンと同じ色で見づらいし、女性の胸の膨らみの陰の黒味もなんだか汚い感じで陰に見えない。
といって、私は絵画を見る眼があるわけではないのでこの絵が素人のデタラメなものなのか、プロの傑作なのかを判断する力はない。
そこでフロントの人に聞いてみた。
「これは何の絵ですか?」
「ピクニックです」
「それはわかりますが、なぜこんなに悲しそうなのですか」
「わかりません」
「これは、有名な画家の絵なのですか?」
「はい。台湾の有名なリという人の作品です」
とのことだ。
ピクニックと言えば、楽しいことがほとんどだろう。ネットで「ピクニック」「絵画」で検索をすると、下のような楽しげな絵ばかりが出てくる。
「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」という有名な遺作を残したあの画家へのオマージュ作品だったりして。まぁ、彼には及ばぬが、画風もどことなく似てるかも。