ここ2、3年、出張でひとりで飲み屋に入ることが多い。以前はそんなことはなかったのだが、震災直後にやたらと飲み会が多かったのがきっかけで酒が好きになってしまったのだ。
それで、チェーン店ではなく地元の人たちが集うような小さい店に入って人間模様を見るのが最近の楽しみだ。
先週も蒲田の小さい小料理屋に入ったのだが、なかなか微妙な店だった。店内は常連で盛り上がっていたのだが、ほとんど私と話していない激しく年配のママさんが突然私のところに来て「一杯いただいていいかしら。380円のビールです」と言った。
仕組みを知らない若者たちのために解説すると、大人の飲み屋では店員が酒を飲むのに客に許可を得る必要があるのだ。なぜかといえば、あきれたことにその代金を客が払うことが前提になっているからだ。そのかわり客は、魅力的な女性店員が酒を飲んで自分と話してくれるわけだから、酔って自制心をなくして嬉しい間違いが起こるのではないかという妄想だかファンタジーだかを抱き、そのために「いいよ」と言うことになるわけだ。店員はできるだけ酔ったふりをして客に「もう一杯飲ませればどうにかなるのでは」と思わせ、さらに奢らせることになる。
店員も、客が金を払うからには飲まないといけないので、店の売り上げを上げるためにまさに体を張って飲むことになる。
先日、仙台駅前のバーで同様に学生アルバイトだという店員から「ワインいただいちゃっていいですか?」と言われたので許可したところ、ちょっと口をつけただけであとは飲まず陰に隠され、私が帰ったら捨てようというのが見え見えだった。こういうのは職業倫理上ダメなのだ。
さて、蒲田のママさんだが、そのビールを注ぐとすぐにもとの常連のところに帰って行き、私と話す様子はなかった。私はもとより何も期待していなかったものの、こうまで接触が少なく、奢る筋合いのない状況で奢らされたのは初めてだ。
しかも焼酎1杯と枝豆と冷奴とカンパチの刺身(+奢ったビール)だけで3,000円だった。高い。
嫌な気持で店を出ようとしたら雨が降っていた。するとママさんは返す保障もない私に「どうぞ」とビニール傘を手渡してくれた。それで私は急に優しい気持ちになったのだが、歩き出すとやたらと雨が漏れる傘で、また嫌な気持ちになったが呆れて可笑しくなってしまった。
良いところは何もないような店だったが、怖いもの見たさでまた行ってみたい気持ちに駆られている。
地獄・天国ともに拝読させていただきました。
地獄は笑いっぱなし、天国は最後の最後に、タイトルにある「天国」の意味に感銘を受けました。
さて、私は上京後の学生時代、蒲田に住んでいたのですが、確かにとくにどうということのない街なのに、なぜかたまに無性に行きたくなる街です。
私にとって、蒲田は昔の学生の「上野」のようなのかもしれません。
西口の工学院通りをしばらく進むと「めいこう」という卓球用品店があります。廃盤ラケットもありますので、行ってみてください。
他には東急東横線の菊名駅近くにある、「カナガワ卓球」というお店は廃盤ラケットだらけです。
神奈川にはラケット買取の「球楽」というお店があり、ここの方が非常に用具に精通しており、私的には「神奈川の伊藤条太」と尊敬?しております。
お買い上げありがとうございました。
楽しい店がたくさんあるのですね。ぜひ行ってみたいと思います。ご紹介ありがとうございました。
ご返信恐縮いたします。
ちなみに言い忘れましたが、茅ヶ崎の「球楽」はご主人が個人的にやられているネットショップで、私はいつもラケットの買い取りなどでお世話になっております。
また、伊藤さんの本の「地獄」は本当に笑えたとおっしゃっていました。特に「用具マニアは用具を変えまくって、うまくなる暇がなく、極端なものばかり使うから」は自認しておられました。
ネット上では載っていませんが、テナジーメチャ安らしいです。
そうですか。ご愛読いただき、ありがたいことです。よろしくお伝えください。