誤解の心配

「ミライ☆モンスター」というテレビ番組で張本智和の特集をやっていた。

張本の凄さを見せるため、例のように台の隅に置いた的にサービスを当てるデモンストレーションをやっていたが、これまた例のように成功した1回しか映さないので、凄いのかどうかが全くわからない映像になっていた。1回だけなら素人でもすぐに当たるしそこだけ放送すればいいからだ。それで驚いて見せるスタジオの人たちもご苦労なことだ。

ということは作る方もわかっているのに1回しか映さなかったということは、2回連続は当たらなかったのだろう。もっとも、それができようができまいが、卓球の実力とはあまり関係がないのだからそもそもどうでもよいことなのだ。それがこのデモンストレーションの限界だ。

そのあと、スタジオでアイドルが的あてに挑戦したのだが、2バウンドめで当たりそうになったところで「2バウンドは反則」とテロップが出た。反則もなにも、そもそも的あてゲームをしているわけでも何でもなく、単に的あての難しさを実感するために試しているだけなのだから、2バウンド目で当たっても意味がないことは言われるまでもない。にもかかわらずいきなり「反則」と書かれたら、これを卓球のルールと誤解する少年少女が出てくるだろう。

実際、アメリカに赴任していたとき、職場のアメリカ人たちがそう思いこんでいたのだ。

私は中学生たちの技術の吸収力は信じているが、理解力はまったく信用していない。先日、教え子の一人が合同練習会に行って、スコアの書き方を習ってきた。11-3、7-11、11-9、11-2と書く代わりに(3、-7、9、2)と書く例の方法だ。ところがこの生徒は、この数字を相手との点差だと誤解し、いちいち引き算をして四苦八苦しながらスコアを書いて帰ってきたのだ。一緒に参加した他校の選手たちからそう教えられたという。

このテレビを見て「2バウンドが反則」だと思って明日から心を入れ替えて台から出るサービスを連発する少年少女たちがいることは間違いないのだ。

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