サービスに必要な精度

今日は非常に楽しい分析をしてみた。

それは、ブツ切りの下回転サービスを出すときに必要な時間的な精度はどれくらいかという分析だ。

方法は簡単だ。卓球王国から発売されているDVD『神のサービス』で、仲村錦治郎のサービスをスーパースローで真横から撮った映像があるので、それを使うのだ。

切るサービスなので、仲村はラケットをほとんど面の方向に振っているため、空振りをしないために必要な時間の幅は、落下するボールの軌道をラケットが端から端まで横切る時間ということになる。

それがこの2枚の写真だ。黒いマジックの線がトスしたボールの落下軌道だ。

この2枚の写真の間には約4コマかかっていた。この撮影では1コマが250分の1秒なので、時間を計算すると0.016秒に相当する。つまりこのサービスを出すのに許されたタイミングのズレは、0.016秒しかないのだ。難しいわけだ。なお、ラケットの横幅を150mmとするとこのときのスイング速度は時速34キロメートルとなる。

ちなみに、同じ仲村によるナックルサービスのときはラケットが横切るのに6コマかかっており、明らかにスイング速度が遅く、時速23キロメートルとなる。

次にバタフライから出ている『水谷隼のサービスレシーブ』というDVDにも同様の場面があったので分析してみた。

こちらは残念ながら撮影条件がわからないため1コマの時間が分からず、速度は計算できなかったが、思わぬ事実がわかった。

インパクト時のラケットはほとんど水平だったが、なんと水谷は、ラケットをボールから逃げるよう斜め下方(面に対して25度)に振っていたのだ。ボールは画面からはみ出るほど高くトスをしていたので、落下速度はかなり速いと思われる。よって、その落下速度の反発力によってボールが高く跳ね上がらないようラケットを下に振りおろしながら回転をかけているものと思われる。

これは、ラケットを水平に振るよりもタイミングのズレの許容時間は小さくなる。詳しくは述べないが、感覚的には、ラケットをボールの落下速度と同じくらいの速度で下方に振ったらほとんど当たるチャンスがないことをイメージしてもらえれば理解できるのではないかと思う。ラケットを斜め上に振り上げればかなり安全にボールに当たるのと逆の現象だ。

今後、選手を真横からスーパースロー撮影して、たとえばカウンタードライブなど高速ボールに対して薄く当てる技術に許された誤差がどれくらいなのか計算していこうと思っている。

0.016秒などという極小時間であれば卓球の凄みを再認識できて、今後いろいろなところで吹聴できるし、意外に長ければ、それらが実戦で有効な理由はそれだ!となるので、どちらにしても楽しい。

サービスに必要な精度” への 2 件のコメント

  1. 伊藤さん、素晴らしい分析、さすがです。
    ところでこの仲村さんのサーブ、卓球王国から配信されているサンプル動画でも紹介されている「ボールを床にたたきつけて足元まで戻ってくるぐらい回転をかける」のがまずできなくて、そこから先にさっぱり進めません。打球直後にラケット面をかぶせるなんてもってのほかで、ただただボール拾いに時間を費やすばかりです。
    スイングスピードが遅いという理由ははっきりしているのですが、一生懸命速く振ってみてもさっぱり上達する気配はなく、そうかー、一流選手ってこんなにすごいんだ、と当たり前の結論に行きつくだけなのでした。
    スーパースローで見てみると時速34kmはほんの一瞬のようで、その前後ではラケットの動きはそれほど大きくないように見えます。あれでボールが戻ってくるなんて一体どうなっているのやら。

    1. 私もあの仲村さんのサーブをやってみましたがとてもじゃないですができません。まして粒高で足下まで戻るなんて信じられません。
      なお、ボールがラケットに当たっている時間は千分の一秒ですので、その瞬間だけ速ければ回転はかかります。

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