水谷の反応時間

ストップをするためには相手のボールがネットを越える前にその決断をしなければならないと書いたが、実際にいつ判断しているのかを今回のオリンピックの映像で確かめてみた。

サムソノフのサービスに対して、水谷がいつストップあるいはドライブを決断しているかだ。サムソノフは希に長いサービスがあるのだが、それに対してドライブのテイクバックを始めた時期と、直後の短いサービスに対してストップの動きを始めた時期を確認した。

まずはストップの動きを始めた瞬間だ。基本の構えからわずかにラケットの面が上を向き始めている。このときボールはまだサムソノフのコートにバウンドし、上昇する途中だ。インパクトからの時間は5コマなので0.17秒だ。

次にドライブのテイクバックを始めた瞬間。ラケットの面がドライブに備えて下を向き始めている。なんと、ボールがサムソノフのコートに弾む前!とんでもなく早い。スイングから判断しているのだろう。時間は4コマで0.13秒。

別の場面を見てみよう。

こちらがストップ。やはりボールの上昇途中。サムソノフのサービスがかなり遅く、ここまでで8コマもかかっている。それでも0.27秒。

これがドライブ。ちょっと遅れているがそれでもネットを越えるはるか手前だ。6コマ0.2秒。

ちなみに水谷のプレーを見ていると、これほど早く判断する必要はないようにも見える。なぜなら水谷は、完全にドライブのテイクバックを終えてから判断ミスに気がついてストップに切り替えたり、逆にストップの動きを途中で止めてドライブをする場面もあり、いずれも間に合っているからだ。中には、ストップの動きからドライブに切り替えさらに再度修正してストップという場面さえあった。もしかするとボールに関係なく最初からフェイクとしてセットの動きだったのかもしれないが、そこまでは判断できない。

このような不確定な事情はあるものの、上の2つの組は何のフェイクもない場面で1試合にほんの2、3回しかなかったレシーブドライブの場面とその直後のレシーブストップの場面なので、水谷がボールや打球フォームを見てこのレベルの時間で反応ができていることは間違いないと思われる。

しかも上述のように、仮にその判断が遅れたり外れたりしても、そこから修正できるだけの俊敏かつ精緻な動きができる肉体も備えているわけだ。これだけの二重三重の時間的余裕があるからこそ、レシーブミスはおろか、相手にチャンスボールを与えることすらないのだ。

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