卓球雨ニモ負ケズ

卓球の詩を作ってみた。宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」のパロディだ。

雨にも負けず

風にも負けず

雪にも夏の暑さにも負けぬ

丈夫なからだをもち

決め球はなく

決して打ち抜けず

かといって安定性もなく

いつも一回戦で負けている

 

週に五日の練習で

フォア打ちと三球目攻撃と

少しのフットワーク練習をし

あらゆる動画を研究し

自分の実力を勘定に入れずに

よく見聞きしわかり

そして実行できず

 

駅から遠くの通りの裏の

小さな暇な会社にいて

東に大会があれば

行って全種目に出場し

西に卓球しすぎの仲間がいれば

行って誘って家族から迷惑がられ

南に卓球用品店がオープンすれば

行って忙しい店員と長々話し

北に初心者がいれば

行って頼まれてもいないのに教え

 

卓がつく名前を見れば

親が卓球好きと決めつけ

「宅急便」「ピンポイント」の言葉に反応し

「前人未踏」「量販店」にも腰を浮かし

年中ユニフォームとジャージで過ごし

チームを作れば団体メンバーから外され

零歳からラケットを握らせた息子は

テニス部に入り

娘はバドミントン部に入り

 

職場でグルーを塗って騒ぎを起し

忌引きで休んで大会に出て

アキレス腱を切って会社に知られ

負けた中学生からアドバイスを請われ

勝った高校生はコーチに正座させられ

ラバーを替えてもサーブは切れず

特注ラケットでも空振り治らず

コツを掴んだと思ったらイップスになり

サービスも入らず

フォア打ちも入らず

もうやめようと思っても

勝利の日の快感を忘れられず

 

五輪の夏はおろおろ歩き

全日本の冬は涙を流し

みんなに物好きと呼ばれ

褒められもせず

苦にもされず

そういう卓球ドランカーが

わたしは愛しい

「卓球ドランカーの詩」

 

卓球雨ニモ負ケズ” への 9 件のコメント

  1. 私も毎日卓球のユニフォームと短パンです。卓球のユニフォームほど着心地の良い服はありません。(そう思っているのは、私と卓球部の息子だけです。)最新ラバーの研究には余念がないのですが、泊りがけで試合にいってもこの5年間で2回しか勝ったことがありません。唯一よいことは、子供が卓球部に在籍していてときどき一緒に練習できることです。何年後になるかわかりませんが、次の1勝をめざして細々練習します。

  2. これは、パロディーとはいえ傑作だと思います。しかしながら、「無類の卓球フリーク以外は理解できそうにない」ところが惜しい。

    僕は、「理解できる方」に属する元無類の卓球フリークですが…

    1. お褒めをありがとうございます。
      ひたすらマニアックな道に落ち込んでいきそうですので、注意したいと思います。

  3. 私も無類の卓球フリークなので、ドハマリですね。
    同じチームの50歳の卓球仲間が試合中に無理しすぎて、本当にアキレス腱を切って会社に知られました。獣医を生業にしてる方だったので、無理はなかったです。
    おかしかったのは、72kgの男性をおんぶして、3階分の階段を上り下りして、300m先の駐車場に運ぶ私の体力でした。同じチームのトラック運転手から「卓球選手の体じゃねぇ」、ツッコまれました。

  4. 「卓球あるある(いるいる?)」ですね。
    それぞれのフレーズに実在の人物の顔が浮かんでしまいます。
    さすが条太先輩です。
    唸らずに入られませんでした

  5. 詩もよいですが,写真がすばらしい.半世紀以上前にタイムスリップしたような卓球場.サービスのフォームもそのころのペンドラのバックサーブを彷彿とさせます(写真はシェークみたいに見えるが).そういえば,「私,失敗しないので」のドクターXでもレトロな卓球場が度々出てきました.

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