よく「今度の大会でメダルを獲ることは我々の至上命題だ」などというセリフを聞く。
まったく噴飯ものである。そんなものが至上命題であるはずがない。
なぜなら「今度の大会でメダルを獲る」というのは、そもそも「命題」ですらないからだ。
「命題」というのは、「日本代表選手は5人である」とか「卓球はスポーツである」というように、ある状態を記述した文章であり、それが「真」なのか「偽」なのか判定し得るような文章のことだ。
非常に簡単に言えば「○○である」と書ける文章のことだ。「メダル獲得」と名詞で終わるのや「メダルを獲る」などという文章は命題ではないのだ。
かつては中学校の数学で習った(逆、裏、対偶とかいうアレだ)ことだし、もちろん辞書にも載っている。
「命題」に「至上」をつけて「至上命題」とするなど、まったく意味不明の誤用である。誤用の理由はわかっている。「命題」という言葉が、より平易で親しみやすい「命令」「使命」「課題」「題目」などより難しくてカッコいい感じがして、なにやら頭が良さそうに聞こえるからだ。その結果、この言葉を使うと逆に、中学校で習う言葉の意味も知らない人間だということが露見してしまうことになるわけだ。
「至上命題」と聞くたびに「いや、それ命題じゃないから」と噴き出しているが、これほど誤用が定着すると、もうじき誤用ではなくなるのだろう。
もしや、それは、「使命と課題」を短縮化した、命題のホモニムなのかも。