我が家の子供たちが毎週見るテレビ番組に『ほこたて』というのがある。
矛と盾の矛盾という意味で、絶対切れない金属と何でも切れるカッターの対決といったようなことを毎回やるのだ。なかなか面白いので私もパソコンをしながら横目で見てる。
今回はなんと、どんなスプーンでも絶対に曲げることが出来る”超能力者”ユリ・ゲラーと、絶対に曲がらないスプーンを作っているという金属メーカーの対決だった。
これまではまともな番組に見えていたのだが、いったいどういうつもりだろうか。テレビ関係者なら、超能力などというものはなく、ユリ・ゲラーはただのマジシャンであることぐらい知っているはずだ。スプーン曲げは、ユリがマジシャンだったときから得意だったレパートリーであり、その発祥からして手品そのものなのだ。トリックの方法はいろいろある。テコの原理を使って力を入れていないように見せて実は力で曲げるのが多いし、すり替えや細工、錯覚という手法もある。だいたい、よりによってスプーンを曲げるということ自体がトリックである証拠だ。もし超能力とやらで曲げるのなら、何もテコの原理が働くような長い必要はない。曲げる予定のところだけ2センチぐらいに切り出した短い金属片を与えたってなんら問題はないはずだ。これで曲げられたら、少なくともテコの原理で曲げたという仮説は除外される。そんな、中学生時代の私でも考え付くような実験すら一度も見たことはない。ハナからマジックだと思っているのでそんな実験はやってみるまでもないからだ。
今日の番組でユリに手渡されたスプーンは、見事に分厚いヤツで、機械を使っても容易には曲がらないようなもので、衆人監視の中でユリはスプーンを擦っていた。曲がったかどうかはレーザースキャンで形を正確に比較するというものだったが、案の定曲がらなかった。当たり前だ。
曲がるわけがないことはユリ自身が誰よりも知っている。一生懸命スプーンを擦りながら「冗談じゃない。こいつらバカか。いくらこすったって曲がるわけねえだろこんなもん。」と思っていたに違いない。本当にバカバカしい。
ユリは「曲げることができなかったスプーンは初めてだ」と言ってスタジオが沸いていたがこれもバカバカしい。ユリはちょっと監視を厳しくされると「今日は調子が悪い」と言ってあきらめることが得意技なのだ。曲がらないことなどしょっちゅうである。何から何までデタラメだ。なお、それでもユリの超能力を本物だと信じる信者たちは「曲がらないことがあることが本物の超能力である証拠だ。手品ならいつでも曲げられるはずだから」という理屈を言う。何が何でも信じたい人たちにはどんな証拠を突きつけても無駄なのだ。まったく”超能力者”たちにはなんとありがたいカモだろうか。