しつこくてすまんが、引き続き東北弁の話だ。
黒柳徹子の半生を描いた『トットてれび』を見ていたら、典型的な間違った東北弁が出てきた。東京を「とうぎょう」と発音したのだ。この間違いはもう、映画やドラマに出てくる東北弁ではまるでそれが作法ででもあるかのように定着しているが、残念ながら「とうぎょう」とは絶対に言わない。「き」に濁音がつかないことになっているわけではない。「先」は「さぎ」と言うし「時」は「どぎ」と言う。
地名や固有名詞が訛らないわけでもない。福島は「ふぐすま」、鈴木は「すずぎ」、下の名前さえ武を「たげし」と言う。それでも東京は「とうぎょう」とは言わないのだ。
なぜかと言われても困るが、ぼんやりとした区別としては、音読みの熟語には濁音がつかないような気がする。法則化はかなり困難と思われる。
すぶや、すんずく、とは言うかもしゃねな。
言いますね。石川さんは特に。
いや、そこまで訛るのは、世界チャンピオンかと。あと、濁点にならず、ぬほんばす、とか言う訛りかたもありそう。「東北弁における訛りの秩序」は、博士論文のネタに使えそう!
東京の人に、ぬほんばすにはどういげばいいのっしゃ?と聞いても、わがんねちゃね。
あ、正しくは、ぬほんばすぬはどういげばいいのしゃ?あるいは、ぬほんばすぬはどういげばいんだべ?で、前者が敬語であり、後者がタメ口になりましか。「に」が「ぬ」と置き換わる、母音のシフトがベースにありますね。
まさしくそうです。東北弁の場合、濁音の他に、母音のシフトとイントネーションが致命的な習慣性がありますからね。
ぬほんばすぬ→日本橋に ですからねえなにしろ。
ただ、やはり、東北弁でしかあらわせない“経験”もある。“いずい”はその代表格だとは思われる。他に“もぞこい”もある。“もぞこい”は“イタい人”に対する愛あるまなざしでもあり、おそらく、東北人の特殊な心のぬくもりを示す言葉かも知れないのである!
東北弁でしか表せない体験として、今のところ思い付いたのを列記すると、「いずい」「もぞこいい」「ちょす」「しずる」などです。後はまだ思い付きません
用例:「ラバーば、ちょすてばりいっと、劣化して、キレねぐなっと! 」「ねっぱすたばりのおいのあだらすいラバーちょすなっ、この
あ、「もぞこい」のタイプミスでした。