柏山さんは今回の昔話の中で、興国高校の名指導者・故田中拓氏のことを語った。
私が入学する少し前、柏山さんは田中拓氏を呼んで水沢高校の練習を見てもらったことがあるという。1970年代後半のことだ。そのとき、田中氏は、「インターハイに出るのは簡単ですよ。中学校から有望な選手を集めればいいんです。高校から練習しても120%無理です」と語ったという。
これがプロの指導者の冷徹な意見なのである。選手を集めないで努力して勝つなどというのは、結局はアマチュアの理想論とエクスキューズに過ぎない。
私は卓球王国の記事に、柏山さんをさも希代の卓球狂のように書いたが、それは全然違う。その程度の卓球狂など全国に何百人もいるだろう。たまたま私の恩師だというだけだ。全国でランクに入るような高校の選手や指導者たちはもう全然レベルの違う吉外たちなのだ。朝まで練習するなんてのは当たり前、ガンガンぶん殴って考えられないような指導を行っているのだ。私財を投げ打って卓球場や、はては学校まで作ってしまう人すらいるのだ。
そういう本物たちと比べたら我々は本当に素人なんだ、という話をしみじみとした。