岸川/水谷 ダブルス準々決勝の誤審

横浜大会の男子ダブルス準々決勝、岸川/水谷組対シンガポール組戦の第6ゲームの8-9からのエッジ判定のシーンをあたらめてITTFのビデオで見直した。

私は当時の実況で「あれはサイドに見える」と書いたが、それはあくまで会場のスロー再生映像だけを見ての感想であり、あらためてビデオを見ると、その判断は間違いであることがわかった。あれはエッジ以外ではありえない。なぜなら、水谷はボールを台の内側で打球しているからだ。台の内側で打たれたボールが、卓球台の側面に当たることは、現代の卓球のボールの軌道ではありえない。水谷がそれを「I push ball here. No possible.」と審判にアピールしている声が入っている。「自分はここでボールをツッツいたんだからサイドはありえない」と言っているのだ。しかし審判はなぜか無反応。まるで水谷の言っている意味が分かっていないような表情だった。他にも年配のおじさんがやってきて水谷と同じような説明をしていたが、誰一人として近くにあった長方形の紙切れを卓球台に見立ててボールの軌道を指し示して審判を納得させようという試みをできなかったのが、今映像を見るともどかしい。

会場のモニターには、問題の核心とばかりに、ボールが台をかすめたシーンばかりを何度もスロー再生していたが、それだけではエッジかサイドかを判定することは難しい。卓球を知っている人なら、水谷がどこでボールを打球したかをこそ再生すべきだった。したくてもできなかった事情があったのかどうかわからないが、当時放送していただろう複数の局のアナウンサーや解説者たちはそのスローが必要であることをコメントしていたのだろうか。「水谷がどこでボールを打ったかが重要ですね。そのVでませんか?」とか言ってくれていたのだろうか。「水谷が台の内側でボールを打った」「そのボールが台に触れた」この二つの証拠があれば、どんな審判でもサイドとは言えない(それでもサイドと言うようなら審判の資格剥奪だろう)。それができなかったのがなんとも残念だ。勝った負けたの問題ではない。こんな明らかな誤審がまかり通ることが残念だ。

学生試合、ある大会で他校の有名選手が同じようにもめたことがある。そのとき彼は、審判にこう詰め寄った。主審に対して「お前は、俺がここ(台の内側)でショートをしたのを見たよな?」と聞いて「はい」と答えさせ、次に副審に「お前は、俺のボールが台に触ったのを見たよな?」と聞いて「はい」と答えさせ、「じゃあこれは絶対にエッジだ。サイドではあり得えない」と審判と相手を納得させた。

選手であろうと審判であろうと放送局であろうと、コレくらいの論理的な判断をしてもらいたい。

なお、私が見逃していた事実がもうひとつあった。今回の卓球台は、側面が鉛直ではなく、下に傾いていたことだ。ボールの入射角と反射角の関係からして、もしサイドなら、ボールはもっともっと下方に落ちなくてはならないから、あのボールの落ち具合を見たなら、やはりあれはサイドではなくエッジの可能性が高いと考えるべきだろう。しかしこれは定量的ではないので絶対的証拠にはならない。もし水谷が台の外でボールを打った場合なら、審判に従うしかなかっただろう。でも今回は違う。ビデオさえ使えばエッジであることを証明することができたのだ。