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ロンの体

それにしてもロンの体は凄い。こんなに筋肉があるのに卓球をこれほど熱心にするというのがなんともミスマッチで可笑しい。私が教えたことはちゃんと覚えていたのだが、いかんせん筋肉が多すぎてスイングの邪魔になっているように思える。なにしろ手や腕をとって形を示そうとしても、ものすごく堅くて腕や手首を動かせないのだ。たぶん筋肉が邪魔で動かないんだと思う。しかもチャックと同様、すごいのは上半身だけで、肝心の下半身が貧弱だ。卓球選手に必要な筋肉の正反対のような気がする。

先日会ってからどれくらい練習をしたのか聞くと「毎日やってる」とのこと。スタンによれば、ロンは練習のしすぎでフォームがめちゃくちゃになっていてどんどん下手になっているのだそうだ。申し訳ないが可笑しい。

結局、休みながら11時から6時くらいまで卓球をしてへとへとである。ロンもさすがに50を過ぎているからゼイゼイ言っているのだが、全身汗でずぶ濡れになりながら卓球をした。卓球場は我々3人の汗でまるでボクシングジムのような臭いが漂っていて(小学生の頃、近くの高校のボクシング部の練習場によく忍び込んだときに嗅いだ臭いだ)、妻が「臭くて入れない」と言っていた。

私は馬龍のバックハンドの連続写真を見てからそのマネに凝っていて、今日はそればかりやった。この歳になってもちょっとの刺激でまだ上達するのが楽しい。

飛行成功!

ロンの飛行機は何事もなく無事にフライトを終えた。ロンは飛行機仲間のエイドリアンという友人と一緒にドーサン空港に現れて、フロララ空港までの30分のフライトを楽しんだ。とても小さなボロボロの飛行機でかなり心配だったが、飛行は普通だった。ジェット機との大きな違いは、離陸があっという間だったことくらいだ。まだ自動車くらいの速度なのに数秒で離陸した。しかし急上昇というわけではなくて、ジェット機で感じられるような激しい上方への加速度はまったく感じられなかった。

飛行機の中はエンジン音で非常にうるさいので、3人ともヘッドフォンをしてマイクで会話をした。さすがに命がかかっているだけあって、離陸前にはチェックリストを見ながら何十個もの項目を二人で声を出して確認しあっていた。フライトの途中で、ロンが「後の席に俺が墜落したときの新聞記事があるから見ろ」とガハハと笑いながら言った(忘れてきたらしくて実際にはなかった)。

飛行機のほとんど最前列で前方を見たらさぞ感激するのかと思ったらそうではなくて、ジェット機の窓から外を見て「そっちに進んでいる」と思うのと違いはなかった。景色が動かないからなのだろう。運転席に座れば違うのだろうか。

飛行機は中古で250万円くらいで5人で共同で買ったという。ちなみに新品だとその10倍ほどだそうだ。空港の使用料は払わなくてもよく、無料だそうだ。

ロンに聞いたところによると、墜落したのは3年前で、離陸してまもなく故障のため急降下し、森に突っ込んだのだそうだ。墜落後、飛行機は火を噴いて炎が木の上まで上がったが、ロンと同乗者ふたりとも逃げて無事だったという。新聞には「奇跡の生還」と書かれたと得意気だ。足と腰にプレートを入れたが、病院を出て4日後にはもう飛行機に乗っていたという。「俺たちは転んでもすぐに起きて走る馬と同じだな」という英語の常套句なのかオリジナルなのかよくわからないことを言っていた。

ともかく、卓球をしていたおかげで珍しい経験をした。なお、エイドリアンは卓球をする人ではなかった。

愚劣なテープ

ここ数年、すっかり音楽に興味がなくなった。
学生時代はあれほどロックに入れ込んでいたのに、ある時期から、だんだんと音楽がうるさく感じられてきて、自分には音楽はまったく必要ではないという結論に達した。学生時代からその兆候はあった。当時から私は、音楽を聴くことは聴いていたが、その解説を読んだり語ることにより喜びを感じていて、自分が本当に音楽を必要としているかについてわずかに不安があった(実は卓球に対しても同じ不安がある)。だから、音楽を好きだというよりは、なんとなく芸術っぽい雰囲気が好きだっただけのような気がする。

こんなことを言ったら、昔から音楽をともに語り合っていた友人から「寂しいこと言うなよ」と言われたが、偽っても仕方がない。私には音楽は要らないものだったのだ。個人的な思い出と完全に結合してしまっているビートルズやニューオーダー、クラッシュ、ルースターズ以外はもう聴くこともないだろうと思い、テープやCD、ビデオを整理した。

それでなんとも愚劣なテープが出てきた。学生時代に私より一足先に就職した友人が送りつけてきたものだ。タイトルからわかるように、ロックの名曲にオリジナルの日本語の詩をつけて歌ったものだ。

東京GALS(竹村/フリップ)
サリーマン(竹村)
報復関税(竹村/バーン)
会社を辞めた(平山/マーリー)
ぼくら学生(竹村/クラプトン)
小判(竹村/レノン・マッカートニー)
胸いっぱいの愛を(竹村/ペイジ)
ブラック・ドッグ(竹村/ペイジ)
ドスケベ・アワノ(竹村)
ムネモミヤモト~フィナーレ(竹村/平山)

タイトルとクレジットを見るだけでバカバカしさが伝わってくる。キング・クリムゾンやトーキング・ヘッズの名曲が、変わり果てたコミックソングになった姿がここにある。これは友人が作ったテープだが、私も同じようなテープをたくさんつくっていて、就職してから職場の音楽好きの後輩にそれらのテープを聞かせたところ、なんだか私がものすごく楽しいことをしていたように感じたらしく「その手があったか。どうして俺もやらなかったんだろう」と悔しがっていた。しかし私はそれほど楽しかったわけではない。何かを残したいが、マシなことができないので仕方なしにこんなことをやっていたのであって、楽しみながらも「こんなことして何になるんだ」と虚しい気持ちが強かった。

20年経ってブログのネタになったので良しとしよう。

ロンの飛行機(遺書)

ロンから連絡が来て、先日の卓球の指導のお礼に、今度の土曜に自家用飛行機に乗せてくれるという。

興味はあるが、なにしろ一度墜落して腰と足にプレートが入っている人である。しかし、自家用飛行機に乗って下界を眺め回すなどということはまずないのだから、乗せてもらおうと思う。もし墜落するようなことがあったら、このブログを遺書にしたい。

編集部へ:
『奇天烈逆も~ション』の単行本を出してください。表紙は無表情のシャリフ。定価は一冊3万円。売り上げは全国の恵まれない卓球が下手な人にノイバウアーの『グリズリー』を寄付するのに充ててください。

ちなみに、フライトはドーサン空港からフロララまでであり、無事に着陸をしたら、そのままスタンの家で卓球をすることになっている。さて、どんなフライトになるだろうか。

恐るべき絵

先日、日本人赴任者の懇親会があった。例によってテーブルごとにチームに分けられ、商品をかけてゲームをやった。

その中で出た問題で「ドラゴンボールに登場するチャオズというキャラクターを描け」というのがあった。私はドラゴンボールもチャオズも知らないので早々に回答を諦め、同じチームでチャオズを知っているというF君に回答をまかせた。

その結果、F君が描いたのが下の絵(写真左)である。恐るべき面白さである。これは意図して描ける絵ではない。絵心がない人特有の思いっきりわけのわからない絵である。まったく表情のない案山子のような顔に、なぜか片方だけ引いた眉。動物とも昆虫ともつかない体。これが”チャオズを知っている”という人が描いた絵だろうか。わずかに頭にあったチャオズの印象が、彼の”チャオズ”の頭上に一本の線を引かせたところも泣かせる。

ちなみに、一昨年、同様の懇親会のゲームで「アルマジロを描け」という問題が出たとき、途方もないアルマジロ(写真右)を描いた人物こそF君その人である。くれぐれも中途半端に絵心をつけて、つまらない絵を描くようにならないでほしいものだ。

銀河宇宙人大百科『大宇宙人』

先日、ある日本人赴任者の家に遊びに行くと、奥さんが2冊の宇宙人本を見せてくれた。もちろんこれは、私がオカルト好きなのを知ってるからであって、誰にでも見せているわけではなかろう。なんでも、父親がそういうのが好きで、まだ幼稚園児の孫娘にこういう本を「読め」と送りつけてくるのだという。それを熟読した娘は、今では幼稚園でお絵かきの時間にUFOから降りてくる宇宙人の絵を書くまでになったという。

見せられた2冊のうち、1冊はどうしようもないデタラメだけの駄本であったが、もう1冊は、大変興味深い本だった。なにしろ題名が怪しい。『大宇宙人』である。しかも表紙のデザインが完全にふざけている。ビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ』のパロディになっているのだ。どうして宇宙人大百科の表紙でビートルズごっこをしなくてはならないのか。著者のところには「目黒宇宙人博物館編」とある。目黒にそんな博物館があるのかと奥付を見ると、著者は目黒卓朗という人で、目黒宇宙人博物館の館長だという。やっぱりそんなことか(笑)。

中を読んでみると、メチャクチャ怪しい宇宙人の目撃談ばかりである。頭がメロンの形をした宇宙人やら、ラベンダーが珍しくて凝視した宇宙人とか、それが何を意味しているのかさっぱり見当のつかない頭の痛くなるような話ばかりだ。

ところが面白いのはここからだ。各宇宙人の目撃例の後に「宇宙人基礎知識」というコラムがあるのだが、そこに書いてあることは完全に正しい知識、つまり、宇宙人の存在を否定するような話ばかりなのだ。チャネラーだのコンタクティーの話は信用できない、アダムスキーはデタラメ、ミステリーサークルやキャトルミューティレーションも超常現象ではない、といった、身も蓋もない話が極めて明解に冷たく書かれている。ふざけた表紙と頭の痛くなるような目撃談とは正反対の正確な情報が書かれているのだ。

もしかするとこの本は、一見、オカルトバカ本を装いながら、安易に宇宙人の話に飛びつくオカルトマニアに真実を教育することを目的とした啓蒙的な本なのではないだろうか。しかし「ジャガイモ袋そっくりの宇宙人」の話の後で「エリア51の話はウソ」などと書いて、果たして効き目はあるのだろうか。なにしろこの二つの話、まったく並列に書かれているので、どちらか片方だけを疑う理由はないのだ。だから読者は、エリア51に宇宙人の死体が隠されている話はウソだけど、ジャガイモ袋そっくりの宇宙人の話は本当だと思うしかない。・・・なんだが、エリア51の方がまだマシのような気がする。

ロンの話

さて、この日一緒に卓球をしたロンの話だ。私は彼とは初対面だったが、とにかく熱心な人だった。外見も52歳には見えない若さだ。卓球は初心者だが、その情熱はあふれんばかりで、私が何か教えると、持参したICレコーダーに語りかけて録音をし、私のアドバイスを忘れないよう努めていた。ここまでされると喜ばないわけには行かない。指導にもいよいよ熱が入る。

郁美さんにると、ロンは不動産だかレンタルだかの仕事で儲けていて、ミリオネラーだというから、何億円もお金があるのだろう。スポーツもスキューバーダイビングや格闘技の経験があり、さらに自家用セスナを持っているのだそうだ。それで何年か前、墜落してし死にそうになり、足腰にはプレートが入っていると言う(アメリカ人って本当にこんな奴ばかりのようである)。パイロットの免許とは珍しいので見せてもらうと、ライト兄弟から始まる飛行機の歴史を感じさせる粋な免許証だった。

卓球の何がロンをこれほどまでにひきつけるのかわからないが、とにかくロンは週に3回はスタンに電話をかけてきて卓球の話をするという。ただ、彼の問題点は、アドバイスをすぐに忘れることだという。私のアドバイスもビデオに撮ったり録音していたようだが、果たして次に会うまで覚えているだろうか。何一つ覚えてなかったらどうしよう。なんだか怖い。

ドクター・チョップの続き

ドクター・チョップはけっこう腹が出ている。「赤ちゃんができたの?」と郁美さんが言えば「スタンの子供かもな」と答えたりして面白かった。

この日は他にもロンという卓球好きの友人もきて、4人で11時から途中、昼食をはさんで6時くらいまで練習をしたのだった。

ドクター・チョップは歳をとっているためなのかもともとなのかわからないが、とにかく話が長い(私も長いとよく言われるけど)。7時くらいになって帰ることになり、ガレージを開けて車に乗ろうとしてからが長かった。やっと車の前に行ったかと思うと、また何かの話を思いつき、ボンネットに腰掛けてしまった。内心「ありゃー」と思った。しばらく話した後、車に乗ったので帰るかと思ったら、今度はダッシュボードから銃を取り出し、それを見せるために再度家の中に逆戻りだ。

銃の安全装置について説明して満足するとドクター・チョップは今度こそ車にのり、さらに窓を開けてスタンを呼んでなにやら話し込み、とうとう寒い夜の闇に消えていった。

ドクター・チョップと卓球

ドクター・チョップと久しぶりに会って卓球をした。本名はロナルド・ピータースというが、自分で勝手にドクター・チョップ、つまり「カット博士」と名乗ってTシャツに刺繍までしている。彼と初めて会ったのは、今からちょうど10年前の2000年10月、この地に初めて出張に来たときだった。ネットで調べて「南アラバマ卓球クラブ」という名前にだまされて彼の家に泊りがけで行って、死ぬほど卓球をさせられたのだ。

彼は当時からすでに「僕は癌なんだ」と言って治療を続けていたが、最近とくに悪くなってきて、来月からは治療のために卓球をできなくなるというので、私の家と彼の家の中間にあるスタンの家で卓球をしたのだ。癌はどこということはなくて全身にあると言っていたが、極めて明るく、卓球を楽しんでいた。それどころか私は2度も負ける始末だ。全身を癌で冒されながらも車で1時間半も運転をしてきた72歳に私は負けたのだ。

彼は10年前に私が彼の家を訪ねたときに撮った写真を持ってきてくれた。今日撮った写真と比べると私は別人のようだ。10年とはこれほど大きいものなのだろうか(妻は私の変貌の鍵は顔のパーツの位置が移動したことだと断言し「大陸移動説」などと言っている)。

彼のことは卓球王国の「奇天烈逆も~ション」の第1回(2006年1月号)に書いたのだが、前回会ったときにあげたその誌面のコピーを今日も大事そうにファイルにとじて持ってきていた。家では額に入れて飾り、日本人の友達がきたら見せるのだと言う。また、前回私が意訳をしたのだが、その後、郁美さん(スタンの奥さん)にも訳してもらって私が嘘をついていないことを確かめて、アメリカ人にもその英訳を読ませているという。

試合中、私がミスをするたびにいろいろ講釈はするわ、ネットすれば「今のは狙ったんだ」と言い、次もまたネットすると「ほら、言ったとおりだろ」と言う。本当に卓球が好きな、なんともいえないジジイなのだ。

卓球科学 (Table Tennis Science)

大阪大学名誉教授の辻さんから、昨年の横浜大会のときに同時開催された卓球科学会議の論文集のサイト紹介のメールが来た。
http://www.ittf-ss.com/

これまでは冊子を作っていたのが、今回からはサイトだけでの紹介になるようだ。より多くの人に読まれそうなので嬉しく思っている。

まだ内容は読んでいないが、これほど面白そうなものが出たというのに、日本卓球協会ホームページのトップページで紹介されていないのが不思議だ。頭でっかちの理屈好きの卓球オタクたちが殺到すること間違いなしなのに。

もっとも、こういうものはなかなか実効的に役に立つものは少ない。科学的アプローチを実技に役立てるためには、スポーツはあまりに複雑多様であり、その中でも卓球はその極北に位置するからだ。

だから、まずは役に立つかどうかはともかく、知的好奇心で読むのがよいと私は考えている。一流選手だけが卓球選手ではないように、実技を楽しむ人だけが卓球ファンではない。実技はさっぱりなのに屁理屈だけはうるさい卓球オタクがいたっておかしくない。他のメジャーなスポーツならいくらでもあることだ。そのような多様なファンの広がりを持つことが、メジャースポーツの証なのだから、そういう卓球の楽しみ方もおろそかにしてはならない。

以下に卓球ファンのいろいろをリストしてみる。

1.学校から就職まで卓球漬けの選手
2.卓球指導で生活している人
3.趣味で生涯スポーツとして卓球を楽しんでいる人
4.卓球競技を観ることを楽しむ人
5.有名女子選手のファン
6.四元ファン
7.卓球ユニフォームフェチ
8.用具オタク
9.卓球理論オタク
10.卓球コラムニスト

みなさんはどれだろうか。