卓球のマンガ

何年か前、中学校のときに描いたマンガが実家から出てきた。描いた内容はまったく覚えていなかったので、初めて読むような気持ちで読めた。面白いとか面白くないという以前に、卓球マニアであることがわかる内容で、自分ながら「好ましい中学生がいたものだ」と思った。

当時、私は、卓球を扱った少女マンガが昔あったという噂を聞いたことがあるだけで、卓球のマンガは一度も見たことがなかった。卓球がマンガに取り上げられたらどんなにいいだろうと思い、自分で描いたのである。ちょっと後に『ダッシュ勝平』というバスケットマンガで主人公が短期間、卓球勝負をするところがとても嬉しかったものだ。もし中学生の私が松本大洋の『ピンポン』なんか見たら泣いて喜んだことだろう。

私の描いたマンガに出てくる選手名や打球のフォームを見ると、すべて荻村伊智朗の『卓球世界のプレー』を参考にしていることがわかる。その本の中ではスウェーデンのステラン・ベンクソンが大きく取り上げられていたので、その憧れのベンクソンをマンガに登場させて主人公と試合をさせたりしている。

憧れているものになりたい、なれないなら自分のところまで引きずり落としたいという願望は当時からあったようである(覚えていないので想像だ)。

他にも、美術の授業の木板に浮き彫りをする工作で、ベンクソンのフォアへの飛びつきの様子を彫った覚えがあるのだが、残念ながらその作品は見つからない。『卓球世界のプレー』のモデルにした写真に、鉛筆で6分割して構図を測定した跡が残っているだけである。