アメリカの野菜

初めてドーサンに出張に来た7年前、ついた夜に、食料の買出しに近くの食料品スーパーに行った。そのときに見た野菜の異様な形は衝撃的だった。その異様な形と縮尺を間違えたような大きさが、前途多難な仕事の先行きを象徴しているようでなんとも不安な泣きたいような気持ちになったものだ。野菜の形がこんなに違うんじゃ、人間も違うわけである。中にはナッパ・キャベツというものが売っているのだが、どう見ても日本の白菜である。アメリカ人に「これは日本の野菜だ」と言ったら意外そうな顔をしていた。

その出張は3人で来たのだが、私がトランクの鍵をなくすというトラブルに見舞われた。どこを探してもない。いよいよ仕方がないので、会社に行ってバールでトランクを壊して開けようということになった。それで同僚の武俊が車のキーを出すと、なぜかそこに見覚えのあるキーが。私のトランクのキーだ。なんと不思議な。私のトランクのキーが武俊のズボンのポケットに入るなど、あり得ないではないか。

よーく考えたら、たった一つだけ可能性があった。宿舎に着いたときに、各部屋の鍵をテーブルに置いて、その鍵を取る方法で各自の部屋を決めたのだが、そのときに私が、トランクのキーを部屋の鍵と一緒にテーブルに置いたのに違いない。そしてそれを武俊が取ったのだ。それ以外には考えられない。なんとも情け無い話である。