写実画

モンゴメリーでは美術館にも行ってきた。
そこで、アメリカの画家、ウイリアム・ハーネットという人の絵に驚いた。

異常に精密なのだ。たかだか横50cmくらいの小さいカンバスに、異常に緻密な画が描かれている。このハーネットという人は、おそらく描くことで表現したいものなどなく、とにかくいろんな質感のものをこれでもかというほど精密に描くことに生きがいを感じていたのだろう。金属、材木、生物、印刷物とどれもこれも信じられない描き込み方で、思わず接写してしまった(撮影可なのだ)。

しかもこのハーネットと言う人、100年以上前に死んでいる。100年以上も前にこんなとんでもない画を描く技術は完成していたのだ。本物そっくりに描くのが偉いなら写真を撮ればいいという言い草があるが、ここまで見事だと、やはり感動する。また、写真ではここまで鮮やかな色は出せまい。

較べるのもなんだが、私も小中学校の頃、画が上手い方でそれなりに自信があった。しかしあるとき『やまねずみロッキーチャック』というアニメを見てからすっかり描くのが嫌になった。そのアニメに出てくる背景が、当時の私がどんなにがんばっても描けないであろう見事な画だった。そしてそれが背景としてほんの数秒使われるだけなのだ。世の中にこんな奴がゴロゴロいたんじゃ、どうにもならないではないか(実際にはゴロゴロはいなかったんだが、たかがアニメの背景ということで、そう感じた)。

もちろん画の良し悪しは上手い下手だけではない。他に魅力があったり、伝えたいことがあったりと価値はいろいろだが、あいにく私の場合、その点でもなーんにもないことが自分でわかっていたので、早々とその道は諦めたのだった。