映画『バックダンサーズ!』

会社に誰かがおいていった『バックダンサーズ!』という映画のDVDを見た。

2006年の日本映画で、まあまあ面白かった。登場人物の演技で気になるところはなかったし、話も面白いし役者も魅力があった。

ただ、実は私は本来この映画を論じる資格がないのだ。それは、踊りが大嫌いだということだ。

小学校の運動会で、毎年「胆沢町音頭」という盆踊りを全員で浴衣姿でやらされたのだが、嫌で嫌で仕方がなかった。正確にはそれほど嫌なわけではないが、「面白くない」だけであり、他の面白くないことと同じように、それに時間を費やすのが嫌だったという意味だ。

逆に私の母は踊りが好きで、「何が面白いのか」と聞くと「音楽に合わせて体を動かすのが楽しい」と言う。母は運動会で私の盆踊りを見て「ロボットみたいだ」と言った。

大学生になったときには、なにか良いことがあるかと思ってディスコに行ったりもしたが、泣きたくなるくらい面白くなかった。踊りも酒も嫌いなのだから当たり前だ。もちろん良いことなどひとつもない。トイレの便器に敷き詰めてあった氷を小便で溶かすのが面白かったぐらいが収穫だ(女子トイレの便器にも氷、敷き詰めてあるんだろうか)。

そんなわけで、私はあらゆる映画の中でミュージカルほど嫌いなものはない。いきなり登場人物が歌いだしてそれが徐々に大人数になって画面いっぱいに広がるなどもってのほかだ。ビデオではそういう場面はどんどん早まわしにして、あっという間に映画は終わってしまう。人が踊るということに何の楽しさも感じないのだから仕方がない。おまけに歌でセリフを言われたりすると意味がわからなくなる。長々と歌って物語の進行を滞らせている役者を見ていると憎しみすら沸いてくる。

また、時代劇や現代劇の高級料亭シーンなどで宴会で芸者を躍らせてみんながいかにも楽しそうにしている場面が出てくると「こいつら、こんなことの何が楽しいんだ?」と強く思ってしまって、ストーリーに入り込むことの妨げになるほどだ。

そういう私が、ステージのバックで踊る少女たちの青春を描いた映画『バックダンサーズ!』を、まあまあだと思ったのだから、もしかするとこれは普通の人にとってはかなり面白い映画なのではないだろうか。調べてみたら、これはテレビドラマ「東京ラブストーリー」「ロングバケーション」など、名だたるヒット作を監督した永山耕三という人の初映画作品で、面白いのも当然であった(しかしやはりダンスのシーンは飛ばさせていただいた)。映画の中で、行き詰った主人公が「ダンサーなんかやっていて何になるんだろ」と自問するところで「そりゃそうだ。バカバカしいから早く止めた方がいい!」と激しく同意してしまった自分が我ながら可笑しかった。私はこの映画内の価値観を根本的に否定している間違った観客なのだ。

これほど踊りが嫌いな私は、異常なのだろうか、それとも同好の人はけっこういるのだろうか。