ローマの休日

私は『ローマの休日』という映画が大好きだ。初めて見たときは絶妙なユーモアに声を出して笑い、オードリーの魅力に魅せられ、映画が終わったときにこれが現実ではなく作り物であり、この愛すべき人たちが実在しないことを思い出して、なんともいえない絶望感に襲われたものだった。

何週間か前、ネットでこの映画の題名についてのコラムを読んだ。この映画の原題はRoman Holidayで、邦題はこの直訳になっている。しかし、実はRoman Holidayとは熟語で、古代ローマで休日の娯楽として奴隷を戦わせるショーがあったことにちなみ「はた迷惑な遊び」さらには転じて「スキャンダル」という意味なのだという。だからこれは一種の誤訳だとさえいえる、と、こう書いてあったのだ。

この映画は、ある国の王女がローマを訪れ、宮殿を抜け出して新聞記者と恋に落ちるというスキャンダルを描いた映画なので、Roman Holidayという題名は、実は巧妙なダブルミーニングになっているというのだ。確かに辞書で調べるとそう書いてあり、なるほどと思った。こんなに好きな映画なのに、私は題名の本当の意味さえ長い間知らずにいたわけだ。でも、こういう新しい発見はやはり嬉しい。

英語圏の人は本当にみんな知っているのだろうかと思い、同僚のマイクとカイルに一応それを確かめてみた。すると、まず二人ともこの映画自体を知らなかった。それはいいとしよう。そこでマイクにRoman Holidayの意味を聞いてみると「何よそれ。ローマの休日?東京の休日やパリの休日と同じだろ。意味なんかない」と言うではないか。「辞書に載ってるぞ」というと、「俺はな、辞書は読まないんだ」と言われた。カイルも同じだった。

ダメだこりゃ。