ロンの話

さて、この日一緒に卓球をしたロンの話だ。私は彼とは初対面だったが、とにかく熱心な人だった。外見も52歳には見えない若さだ。卓球は初心者だが、その情熱はあふれんばかりで、私が何か教えると、持参したICレコーダーに語りかけて録音をし、私のアドバイスを忘れないよう努めていた。ここまでされると喜ばないわけには行かない。指導にもいよいよ熱が入る。

郁美さんにると、ロンは不動産だかレンタルだかの仕事で儲けていて、ミリオネラーだというから、何億円もお金があるのだろう。スポーツもスキューバーダイビングや格闘技の経験があり、さらに自家用セスナを持っているのだそうだ。それで何年か前、墜落してし死にそうになり、足腰にはプレートが入っていると言う(アメリカ人って本当にこんな奴ばかりのようである)。パイロットの免許とは珍しいので見せてもらうと、ライト兄弟から始まる飛行機の歴史を感じさせる粋な免許証だった。

卓球の何がロンをこれほどまでにひきつけるのかわからないが、とにかくロンは週に3回はスタンに電話をかけてきて卓球の話をするという。ただ、彼の問題点は、アドバイスをすぐに忘れることだという。私のアドバイスもビデオに撮ったり録音していたようだが、果たして次に会うまで覚えているだろうか。何一つ覚えてなかったらどうしよう。なんだか怖い。