愚劣なテープ

ここ数年、すっかり音楽に興味がなくなった。
学生時代はあれほどロックに入れ込んでいたのに、ある時期から、だんだんと音楽がうるさく感じられてきて、自分には音楽はまったく必要ではないという結論に達した。学生時代からその兆候はあった。当時から私は、音楽を聴くことは聴いていたが、その解説を読んだり語ることにより喜びを感じていて、自分が本当に音楽を必要としているかについてわずかに不安があった(実は卓球に対しても同じ不安がある)。だから、音楽を好きだというよりは、なんとなく芸術っぽい雰囲気が好きだっただけのような気がする。

こんなことを言ったら、昔から音楽をともに語り合っていた友人から「寂しいこと言うなよ」と言われたが、偽っても仕方がない。私には音楽は要らないものだったのだ。個人的な思い出と完全に結合してしまっているビートルズやニューオーダー、クラッシュ、ルースターズ以外はもう聴くこともないだろうと思い、テープやCD、ビデオを整理した。

それでなんとも愚劣なテープが出てきた。学生時代に私より一足先に就職した友人が送りつけてきたものだ。タイトルからわかるように、ロックの名曲にオリジナルの日本語の詩をつけて歌ったものだ。

東京GALS(竹村/フリップ)
サリーマン(竹村)
報復関税(竹村/バーン)
会社を辞めた(平山/マーリー)
ぼくら学生(竹村/クラプトン)
小判(竹村/レノン・マッカートニー)
胸いっぱいの愛を(竹村/ペイジ)
ブラック・ドッグ(竹村/ペイジ)
ドスケベ・アワノ(竹村)
ムネモミヤモト~フィナーレ(竹村/平山)

タイトルとクレジットを見るだけでバカバカしさが伝わってくる。キング・クリムゾンやトーキング・ヘッズの名曲が、変わり果てたコミックソングになった姿がここにある。これは友人が作ったテープだが、私も同じようなテープをたくさんつくっていて、就職してから職場の音楽好きの後輩にそれらのテープを聞かせたところ、なんだか私がものすごく楽しいことをしていたように感じたらしく「その手があったか。どうして俺もやらなかったんだろう」と悔しがっていた。しかし私はそれほど楽しかったわけではない。何かを残したいが、マシなことができないので仕方なしにこんなことをやっていたのであって、楽しみながらも「こんなことして何になるんだ」と虚しい気持ちが強かった。

20年経ってブログのネタになったので良しとしよう。