トイレでブー

アメリカに来て感じることは、「普通はこうだ」という考えがあまりなく、自分と違う他人の振る舞いに対して比較的大らかだということだ。私はいつもアメリカ人の常識というのを気にかけて「日本ではこうだけどアメリカではどうか」と聞くのだが、大抵はあまりはっきりした答えはなくて「人それぞれだ」などといわれることが多い。異民族の集まりなのでそれぞれに常識が違いすぎるため、「普通」なんていうのが無意味なのだろう。

だから日本人の私が多少奇妙なことをしても「変な奴だ」ではなくて「日本ではそうなんだろう」と思われるだけで、特に良いとも悪いとも思われないだろうと思っている。

それで最近はトレイで小便をしながら思いっきり屁をすることにしている。日本でもアメリカでもトイレで大音量で屁をする人はいないので心理的抵抗があるのだが、アメリカ人の前でなら「文化の違い」と許容してくれるだろうとの読みで、これ幸いにと努めて屁をするようにしている。「日本人は普段、和を重んじて、ニコニコしているくせに便所では屁かよ!」とアメリカ人に誤解させるのも愉快ではないか。

そもそもトイレで屁をしないのはおかしいと私は常々思っていた。屁よりもはるかに臭い大便すら許容されている場所でなぜ屁を忌避しなくてはならないのか。それを恥ずかしいとするような幼稚な考えは止めようと思っていた。とはいえ、日本にいたとき、職場の同僚が小便をしながら「ベベベベ」と汚い音の屁をし「おっ」と声を発したのを目の当たりにしたときは、なんとも不愉快な気持ちがしたものだった(だいたい自分でびっくりするというのがおかしい)。その後、彼の行為は正しいというのが私が出した結論であったが、なかなか実践の機会はなかった。今こそ心を鬼にしてそれを実践するときなのだ。実践しすぎて本物が出ないように気をつけたい。