クレバー・ハンス

最近、職場で自分でニックネームを名乗る遊びひそかに流行している。

やれ自分はオフロスキー(オーロスキーではない)だとかアンジェリカだとか言うわけだが、そのなかでハンスと名乗るヤツがいる。その前に私は彼に「黄レンジャー」と命名したのだが、それが気に入らないらしく自分でハンスと名乗りだしたのだ。何かの映画の登場人物らしいが、私は彼の主張を尊重しつつ、ちょっとひねって「クレバー・ハンス」と呼ぶことにした。

本人は、その利口さを讃えられたと思ってご満悦だが、実はこれは馬の名前なのだ。

100年ほど前のドイツで、その後の超心理学や疑似科学史に大きな影響を与えた「クレバー・ハンス事件」というのがあった。当時、計算が出来る馬がいるというので有名になり、どうしてもトリックが見つからなかったのだ。ハンスは、出された問題に対してひづめで床を叩く回数で答えていたのだが、実はこの馬は、答えを知っている観客や質問者が無意識に発するボディランゲージを読み取り、床を叩くのを止める頃合いを察知していたのだ。そうすることで餌をもらえるので、自然にそのようなスキルが身についたというのがこの事件の真相である。

そんなわけで、本人は馬だとも知らずに「クレバー・ハンス」と名乗っているというわけである。

ちなみに私はグレゴリー・ペックにちなんで「ペック船長」だ。船もないのに。そのうち洒落で宴会用に船長の帽子でも買ってみようと思っている。