吉田戦車トークショー

マンガ家の吉田戦車のトークショーに行ってきた。
新しく発売された子育て実録マンガ『まんが親』の販売促進活動の一環らしい。
http://www.city.oshu.iwate.jp/download.rbz?cmd=50&cd=2335&tg=6&inline=1

トークショーは私の実家の近くで行われたので、ついでに実家に寄りながらの参加となった。

吉田戦車は私と高校で同級生だったが、クラスが一緒になったことはなく、有名になってから卒業アルバムで見たことはあっただけで直接見るのは今回が初めてだ。

観客は見たところ300人ぐらいいて、先着50名のサイン会の整理券も、午前10時から配るのに7時から並んでいた人がいてあっという間に売切れてしまったという。

トークショーでは吉田氏が、アナウンサーが用意した質問に答える形で進み、最後に何人かの会場の参加者からの質問にも答え、約1時間だった。印象に残ったのは「一番尊敬するマンガ家は?」という質問に対して「多すぎて上げられないが、ダントツの存在として水木しげる」と答えたことだ。「あんな飄々としてのほほんとしたマンガが描きたい」と言っていた。水木先生のサイン入りの鬼太郎の色紙は家宝だそうだ。また「マンガを描くときに気をつけていることは?」という質問に対しては「納期を守ること、できればクオリティを落とさずに」と答えた。
「好きなキャラクターは?」という質問に対しては「しいたけ」と即答。カッコいいからだそうだ。
「生まれ変わったらもう一度マンガ家になりたいか?」という質問に対しては「なりたくない」というもので、その理由は「別のことをしたいから」。そもそもマンガ家になるような人は何事にも飽きやすいような人なのであり、誰でもそう答えるのではないかと語った。その他、高校のアニメ研究会の人たちからは、一日に何ページ描くかとか(アイディアからだと2、3ページとのこと)、道具は何を使っているかとかの質問があった。小学生からは「山崎先生は何物ですか」という質問があり「何でしょうか(笑)。あれは教師です」と答えていた。

小さい頃はマンガ家になりたかったが、高校のころはプロのマンガ家のマンガがあまりにも面白くてとても自分には描けないと思い、すっかり諦めていたとのこと。ところが大学を卒業できなそうになったとき、たまたま編集者をやっていた高校の同級生に「お前マンガ描けるんだからマンガ描いたら?」と言われ、そのコネでイラストを描いたのがデビューのきっかけだったという。「吉田戦車」というペンネームもその編集者がつけたので、彼には一生頭が上がらないという。また、小さい頃は石ノ森章太郎に憧れていて、もともとはストーリーマンガを描きたかったという。

あれだけ奇妙なマンガを描く割にはというか、だからこそと言うべきか、極めて常識的な人に見えた。

むしろ非常識な人は質問者の中に見つけられる。私は真っ先に手を上げて変わりばえのしない質問をしたのだが、次に質問をしたご老人がすごかった。

なにしろのっけから「吉田戦車さんのマンガは読んだことがないんですけれども、トークショーがあるというので昨夜読んで見ました」と言うのだから、なんともいえない嫌な予感がするではないか。その予感は的中した。なんとその方は、読んだ感想を述べ始めたのだ。言っておくが質問をしたくて手を上げた人は10人以上もいて、時間は限られているのだ(10分もなかったはずだ)。私だって本当はあと2つ聞きたいことがあったのに我慢をして一つで止めたのだ。ところがこのご老人は、質問をしないで感想を語り始めたのだ。

それは時間にすれば1、2分だったかもしれないが、私の体感時間は5分ぐらいであった。そしてやっと「そこで質問をしたかったのは・・」と始めたので、やっと質問をしてくれるのかと思ったら、なんと「その答えはさきほどアナウンサーの方の質問の中ですでにお答えになっているのでその質問をするのは止めます」と言ったのだ。がひょーっ!や、止める、質問を止めることを言いに手を上げたのか?と思ったら、最後にちゃんと別の質問をして着地をしたのだった。ほっ(もう遅いが)。ちなみにその質問は「マンガの内容は事前に奥さんの了解をもらっているのか」というもので「もらっている」というのがその答えだった。

その後、中学生と小学生が何人か質問をしたところで時間切れになってしまった。本当はあと2、3人は質問できたはずだったと見た。

多様なファン層をアピールするために老若男女に質問をしてもらいたくなるのは自然な心理だが、そこにはこういう地雷があることを主催者は注意しなくてはならないということを学んだ。実に、人生には無駄なことというのはないのだなあ(そう思うことで納得したい)。

1時間のトークショーの後は、サイン会で、整理券を買った50人が色紙にサインをしてもらっていた。サインの他にリクエストに応えて好きなキャラクターを描いていたのだが、その描き方はとても丁寧で、線を引く前に何度もペン先を空振りしてから少しづつ描いており、1枚描くのに2分ぐらいかけていた。そのため、サイン会に1時間半もとっていて、結構な労力であった。