しばらくして、やっとワルドナーの試合を見ることができた。
最初に見たのはカットマンとの試合だ。相手も前の試合を見るとかなり上手だったが、さすがにワルドナーではキツかった。ワルドナーとカットマンといえば、90年台初頭、当時世界最高のカットマンだった北朝鮮のリ・グンサンに対して、立ち上がりから連取してなんと14-0まで行って、あわやラブゲームにするところだったほどだ。しかもそのときのラリーは、一本ごとにありとあらゆる技をまるで実験をするように使ってリ・グンサンを翻弄したのだ。この日もワルドナーは、打点の高いカーブドライブやらナックルドライブを見舞っていた。意外だったのは、ワルドナーのカーブドライブを相手の人がカットで落とすことが多かったことだ。
次の相手はなんと、東京アートの大森監督が現役時代と同様のバンダナを巻いて登場。こりゃ大変なことになったと尿意をもよおしたが、我慢して見ていると、ワルドナーから点を取ることは難しいらしく0-3で敗れた。その前の試合まで大森自身が格下の選手にやっていたように、ワルドナーは普通にツッツキやらブロックやらリラックスしてやっているのだが、大森選手はリスクを犯さないと点を取れないため、勝機を見出せなかった。ワルドナーの一球一球の質がまるっきり違うのだろう。
決勝の相手は、遠藤という選手で、めちゃくちゃ強かった。なにしろあのワルドナー相手にブツ切りの下回転サービスで3、4本レシーブミスさせたのだ。ラリーでも完全に押していて、1ゲームを取り、とられたゲームも接戦で勝っても少しもおかしくない内容だった。
「コラッ、このお方がクアランプールで劉国梁を粉砕し、アテネでは38歳にして馬琳とボルの夢を打ち砕いたお方だと知っての狼藉か?ん?」と言いたい試合だった。しかし最後はバカみたいに速いバックストレートのロングサービスで一歩も動けず。97年マンチェスターでのサムソノフ戦を髣髴とさせた。もうひとつ印象に残ったのは、相手のバッククロスの回り込みフォアドライブに対するバックストレートに逆モーション気味に流すバックブロックが特別に速かった。このブロックはおそらくワルドナーが世界で最初に始めたものだが、さすがに本家本元は凄かった。