もう一人の卓球指導者

先日の飲み会で青山さんが連れてきたのが、宮城県中体連卓球専門部委員長を務める今野啓さんという人だ。
今野さんは昨年の屋外卓球イベントを開催したときに会場に来てくれてご挨拶をいただいた方で、知っている間柄であった。実は私はその10年ほど前に彼をホームページで知っていたのだった。私が中学校の外部コーチを始めた頃、情報収集のためにネット検索をしていて偶然、やけに熱心な生徒との熱い指導のやりとりを綴っていたホームページを見つけた。生徒たちのモチベーションの上げ方や、戦略的な戦型構成、最後の大会での生徒たちと感動的な心の交流について熱く熱く熱く語っており、内心「うわ、臭いなあ」と思いながらも印象深く、今野という名前を覚えていたのだった。もちろんそれが県中体連委員長と同一人物である保証はなかったが、考えてみると仙台市内に今野という姓の卓球狂いの中学教師が二人もいる可能性は低かったもと言える。果たしてその当人であることが昨年のイベントでわかったのであった。

飲み会ではそのとき以来であったが、なにしろ過度な卓球狂いなのでいかんともしがたい楽しさであった。今野さんは今は指導よりも大会運営など裏方に興味が行き、ほぼ毎週県内をとびまわっては講習会やら大会やらを見ているというのだからいよいよオカしく、私と同様「それのどこが楽しいのか」と他人には理解されない孤独な領域をつき進んでいると言えるだろう。

指導をしていた頃の話になると語り口は瞬時にヒートアップした。過度な部活に疑問を呈する父兄との軋轢についての話では「小学校から卓球している相手に勝つためには土日は朝から晩まで練習しなかったらどうやって練習時間確保するんですか。単純な数学ですよ。計算したらわかるでしょ?」などとむちゃくちゃなこれぞ卓球指導者という理屈で対抗していたという。素晴らしい。また、中学の団体戦ではカットが有利と判断して生徒に視聴覚室で松下浩二のビデオばかり見せて洗脳しカットに導く様は、まさに「指導者は自分のために指導をする」という私のセオリーを体現していた。これでなくては初心者から教えた選手だけのチームで県ベスト4など入れはしない。

この人も青山さんと同様、義務教育の目的などとうに忘れ去っているのだ。指導者はこうでなくてはならない、と膝を打った飲み会であった。

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