忘れたカーディガン

全日本では、千駄ヶ谷にある親戚の叔父さん叔母さんの家に3泊ともお世話になったのだが、そこでちょっとした面白いことがあった。初日は今野さんたちと夕食をしてから11時頃に親戚の家に着き、その夜はちょっと話して寝たのだが、翌朝、試合会場に行こうというときになって、家から着てきたはずの黒いカーディガンがないことに気がついた。前夜に食事をした新宿の『かに道楽』に忘れたに違いないと思ったが、取りに行く時間がない。仕方がないので、最終日の試合が終わった後で取りに行くことにした。

そしていよいよ明日が最終日という日の夜、叔父さん、叔母さんと夕飯を食べているときに、叔父さんが言った。「ママ、この服、どうもいつも着ているのと違うけどボク、こんなの持ってたっけ?」見ると、叔父さんが着ているのはまさに私の黒いカーディガンではないか。初日の夜に居間で脱いでそのままにしていたのを叔母さんがカゴに片付けたのだ。叔父さんは黒いカーディガンを2着持っているのだが、その日は3着あり、大昔に買った物がどこからか出てきたぐらいに思っていたのだという。3着のうち、たまたま私のカーディガンを手に取り、それを私の前で着てくれたために真実が発覚したのであった。

この偶然がなければ、おそらくそのカーディガンが私の元に戻ってくることはなく、捨てられるか関係者がこの世からいなくなるまでどこかにしまわれ続けただろう。神様も粋なことをしてくれたものだ(大げさだが)。

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