ついに私の記事が電子書籍化された。『卓球本悦楽主義』だ。これは私の初めての雑誌連載であり、2004年1月号から2年間にわたって続いたものだ。
https://world-tt.com/ps_book/ebook.php?lst=2&sbct=D&dis=1&mcd=DZ005
連載までのいきさつはeBookの最後の「発刊にあたって」に詳しく書いたが、連載の第1回の号が書店に並んだ時のことはついこの前のことのように覚えている。2003年11月のことだからちょうど10年前だ。この連載のきっかけを作ってくれた故・藤井基男さんの出版記念パーティーに呼ばれて東京に行く日が発売日で、仙台駅の書店で手に取ったのだった。ティモ・ボルが表紙のかっこいい号だ。自分の名前が雑誌の執筆者のところに印刷されているのが信じられず、目次やら表紙やら何度も何度も眺めた。それまでの人生で嬉しかったことをいくつか思い出してみて、それらのどれよりも嬉しいことを確認した。「あ、これは一番だ」と思った。数時間後にもらえることがわかっているのにその場で買った。我慢できるわけがない。今もその書店に行くとそのときのことを思い出す。
この連載は、あろうことか卓球の指導書を一冊づつ紹介するという連載である。もちろんただの紹介ではない。わざと変なところだけを取り上げて皮肉交じりに論評をするという、マイナーにもほどがある連載だ。卓球の指導書は200冊以上もっているし、幸いにも卓球の指導書というのは「変なところ」だらけなので、ネタには困らずなんとも楽しい夢のような2年間だった。マニアックな内容なので、卓球に詳しくない人にはキツイかもしれないが、卓球マニアのハートをがっしりと鷲づかみにする内容になっていると自負している。自分では今の連載『奇天烈!逆も〜ション』よりも面白いと思っているくらいだ。
『卓球本悦楽主義』の連載を始めて2年が経った頃、担当の野中さんから次のようなメールが来た(原文)。
「卓球本悦楽主義の連載は、10月発売の12月号(24回目)をもって、一旦終了でお願いします。ただ、かなり人気の高いコーナーだったので、様子を見て、また違う形などでお願いするかもしれません。その時は、またご協力をお願いします。」
「ああ。これで夢の時間が終わる」と目の前が真っ暗になった。人気があるなら終わるはずがないし「違う形でのお願い」などあるわけがない。社交辞令なのだ。と落ち込んでいると、2週間後に今野編集長から
「さて、2年にわたり連載していただいた卓球本悦楽主義も終わりに近づいてきましたが、ひとつお願いがあります。卓球コラムニストとして、その時の世相や、卓球界のホットな話題、などを取り上げながら、伊藤さんの独特のタッチで新たなコラムをお願いできませんか。」
とメールが来たではないか(原文)。ひゃっほーう!本当だったんだ!と今度は有頂天になる、まったく起伏の激しい2週間だった(仕事どころではない)。もっとも、いざ書いてみたら「面白くないので書き直してください」と言われる一幕はあったものの、こうして2006年1月号から始まったのが今の『奇天烈!逆も〜ション』なのである。そちらは8年も経ってしまった。もはやライフワークのつもりで書かせてもらっている。次はこちらの書籍化が目標だ。