今野啓という男

昨夜は、今後のネタのための取材という名目で、宮城県中体連卓球専門部委員長の今野啓(けい)さんと逆モーションでも取り上げた大学の先輩の青山さんと深酒をした。啓さんは、かつては情熱的な指導者であったが今では卓球大会を主催することに生きがいを見出しており、来月宮城県で行われる全中の大会責任者として、昨年10月から授業を持たずに大会の準備に専念している中学教師だ。

啓さんとはこれまでにも飲んでいるが、今回は、今後の原稿のネタに啓さんが「こうなってしまった」いきさつを根掘り葉掘り聞かせてもらう趣旨で夕方7時から飲んだが、あまりにも面白くてあっという間に7時間半が過ぎた。仕事なら1日分だ。

詳しくはいつか原稿に書くとして、簡単に書くと、

【出生】

1975年3月宮城県加美郡色麻(しかま)町に兼業農家の息子として生まれる。

【色麻中学時代】

・将来なりたい職業は「総理大臣」「東北放送のアナウンサー」「中学教師」という、バランス感覚も加減もわからない中学生であった。

・卓球レポートも知らない田舎の中学で、カーボンラケットにゴクウスラバーを貼り、最後の大会では4つの中学校で県大会出場を争ったが決勝で負けて午前中いっぱい号泣し、午後の個人戦では団体で勝った初心者の1年生に5-21で負けて引退。相手はバック面に「何やらフサフサしたラバーを貼っていた」という。

【古川高校時代】

・卓球部に入りたかったが片道18キロの自転車通学で「卓球部になど入ったら落第する」と激怒した父に殴られて断念、かわりに生徒会に入る。

・男子校だけあって、もっともヒドい下ネタ仮装をやると票が入ると言われる生徒会長立候補演説で、「ケツワリバシ」「チチクリマンボウ」という演目(なぜ立候補演説に演目があるのか不明)をやった対立候補を、ぶっちぎりの下ネタ(とてもここに書けない)で破って当選、生徒会長となる。

・文化祭前のパレードでは生徒会執行部としてノーパンにタイツ姿で駅前を練り歩き警察に「ズボンを穿け」と注意される。ちなみに吹奏楽部は女子用スクール水着、スキー部は全裸に股間ガムテープ一本で歩く。ウイットと下品の区別がつかない悲しいレベルだ。大丈夫か古川高校(当時の)!

【宮城教育大学時代】

・自分が卓球が下手であることを初めて知る。世の中に卓球の雑誌があることに驚く。東北大の西村雅裕を尊敬し、その持論「構えたときから相手に嫌な気持ちを起こさせて試合を有利に運ぶ」を曲解し、舌を出して構えたりするが勝てず。すっかり卓球が嫌になる。

・3年の夏から英国のエセックス大学に留学したが、たまたまやってみた卓球が卓球部のメンバー(限りなく素人の可能性大)より上手くエースとなり、英国大学卓球ランキング44位となる。自分に足りなかったのは自信だった、とすっかり上達したものと思い込んでいたが、帰国後まったく上達していないことを発見し愕然とする。あらためて卓球が嫌になる。

【中学教員〜現在】

・なりゆきで卓球部の顧問となり、いっちょ揉んでやろうと思って生徒と試合をして負ける。卓球レポートと卓球王国を買って理論武装し熱狂的な指導者となる。中学から卓球を始めた部員だけで宮城県で2位のチームを作った。

・宮城県中体連卓球専門部の委員長となり大会運営に軸足を移す。2011年3月11日の東日本大震災で県大会実現のため奔走した(ここの話を聞きながら私は何度となく涙が滲み、落涙を我慢した。私は冷たい人間のためか、震災だろうが何だろうが他人のことで涙が出たことなどなく、こんなに感動したのは初めてだ)

・公認審判員として世界選手権東京大会、上海ジュニアで審判を務める。世界ではイエローカードを出されるまで違反をするのが普通であり、審判も戦っており試合を作っていることを知る。「大学時代に英国留学したのも結局、将来国際審判をやれってことだったんだと思う」と不可解な確信を持つに至る。

以上のようなあまりにも実り多いインタビューであり、これで原稿を3本は書けそうである。よくもこんな特異な男が身近にいたものだ。恐らく全国には私の知らないこういう人がたくさんいるのだろう。なんとかして会いたいものである。

帰り際、我々の話を何時間も黙って聞いていた店員さんが「実はバイトの店員に卓球の猛者がいるんです」と告白。よく考えるとどうでもいい話だが、酔っているし、なんだか無性に嬉しくて写真を撮ってもらった。

今野啓という男” への 3 件のコメント

  1. 楽しい時間を有り難うございました!
    ブログに出るかな、と見てみたら、ここまで赤裸々に(*^-^*)ゞ
    色麻の名をあげてもらい、光栄です。
    また飲みましょうね(^^)/

  2. 卓球王国に伊藤さんのコラムがないのはとても寂しかったです。卓球は当然大好きですし卓球王国で一番重要な記事は技術特集だと思ってはいます。それに用具情報、大会報道があって料理に例えるならフルコースでお腹いっぱいになるのですが、伊藤さんのコラムというデザートがないと胃もたれしてしまいます。
    ただ今は素材を仕入れてらっしゃるようなので再開を気長に待ちたいと思います!

    1. 激励ありがとうございます。
      おっしゃる通り、着々とネタを仕入れておりますのでお楽しみに。

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