クラッシュについて

クラッシュがどのようにチンピラなのかあるいはチンピラではないのか、ちょっと説明したい。あの映像だけで誤解されるのもまずいので。

ともかく、箇条書きにしてみる。

・クラッシュの歌はラブソングはほとんどなく、1人称で書かれた社会や政治についての歌ばかりである。先に紹介した映像も「白い暴動(white riot)」という曲で、「白人の暴動を、自分自身の暴動を起こせ、コントロールする側になりたいのか、される側になりたいのか、自分で決めろ」というような歌だ。
・メンバーは喧嘩早く、ちょっとしたことで殴り合いの喧嘩をする
・普段から過激なファッションをしているのみならず、ガンをつけたりもするので、明らかに近づきたくない人たちである
・ドラムがサウンドの要と考えるリーダーのジョーは、ドラマーをオーディションでロンドン中を探したが、200人までオーディションをしたことは覚えているという。その末に見つけたのがトッパーだった。
・ジョーは、ギターのミックを「時間を守らない」という理由で、ドラムのトッパーを「ヘロインに手を出した」という理由でクビにし、それによってバンドとしての力が落ち、解散につながった。「メンバーがドラッグをやっているのに『ドラッグを止めろ』という歌を歌えるわけがない」と語った。
このように、チンピラといっても、本人たちとしてはものすごく真面目なのだ。しかも一般的な不良少年と違って「外見は怖いけど仲間内ではいい奴」ではなくて、なんだか本当に殺伐としていて、自分の信念のためには仲間を犠牲にすることも厭わないような奴らなのだ。つまり、日本で言えば不良やツッパリ(死語)ではなくてどちらかといえば学生運動の過激派というところだろうか(これとても私は全面的には認められないが)。

これに対して菅生のロックンロールオリンピックでDJが語った「女の子の一人も守れねえのかよ」「どうせお前ら就職するんだろ」というセリフは、甘えと通俗モラルが正体の見掛け倒しの反逆精神であり、私の知っているロックと正反対のものだった。だからやたらと腹が立ったのだった。