アニストン・オープン その3

会場について、参加者のレーティングを見ると、われわれのチーム「Junk Factory」は2位で、レーティングどおりなら決勝までは残らなくては恥ずかしい。チーム名は、ジャンク・ラバーからとった。こちらでは、通常の裏ソフト以外のラバーは、いかがわしいラバーという思いを込めてジャンク・ラバーと呼ぶ。わがチームは3人ともジャンク・ラバーを使っているので(チャックとウォレンは粒高、私は表)、ウォレンがこの名前で登録をしたのだ。ちなみに昨年は「King of Wet」で、ラリー中のエッジやネットの総称であるwetからとっている。もともとは、ラバーが汗でぬれたことによるミスを言っていたのだが、いまではネットやエッジのこともひっくるめてwetというんだとウォレンが説明してくれたが、どうもアラバマ州内でも他の地域の人たちは知らない様子だ。方言なのかもしれない。

結局試合は、準決勝で日本人二人のチーム「Space Samurai」に負けた。南くん、秋山くんの二人組み(右の写真)で、North Alabama Universityの学生だ。南くんは高校時代に団体でインターハイに出たそうだが、個人戦では二人とも県でベスト8が最高だそうで、ちょうど私と同じくらいの実力で、面白いくらいに競って、楽しめた。

準決勝を前にして、チャックとウォレンがそれまでの試合とはうって変わって自分たちが多く出たいと言い出した。レーティングが高い相手に勝ってレーティングを上げるチャンスがほしいというのだ。チームが勝つためには私が多く出た方がいいにきまっているのだが、自分のレーティングが上がるチャンスが欲しいというのだ。結局、あの相手ではウォレンは勝つ見込みがないと私が判断して、私とチャックだけで出ることにした。

試合は、私が2敗し、ダブルスとチャックの1点で2-3で負けた。私は出た3試合がすべてフルゲームまでもつれて合計15ゲームもしたので、フラフラだった。後で聞くと、彼らも試合後は立っているのがやっとで、決勝では「Mr. Sushi」に1-3で負けてしまったそうだ。Mr.Sushiはたぶん昨年も優勝していて、アメリカ生まれの日系ブラジル人の河本さんという人と、その教え子のデビッドという少年のチームだ。

チャックが南くんと試合をしているとき、ベンチで私とウォレンが口論になった。私が、「チャックはリスクをおかして攻撃しないと勝ち目がないので攻撃すべきだ」というと、ウォレンは「違う」という。両者のレーティングは同じくらいなので、普通にやって五分五分だという。「南の実力はレーティング以上だ」と私が説明しても、「レーティングがすべてを物語っている、事実を見ろ」と私に言うのだ(自分の方がチャックよりレーティングが高いことも根にあるのだろう)。バカ。この期におよんでレーティングなど関係あるか、目の前で行われている試合を見ろよ、南が攻撃するとミスをほとんどしないしチャックは一本も返せてないので、80%が南の得点になっている、チャックが唯一得点できているのは、チャックが攻撃したときだけだ、だから勝つには攻撃する以外にないんだと力説した。二人で声を荒げたので、前の席に座っていた秋山くんが振り返った。

結局、ウォレンを説得するのはあきらめてチャックに直接アドバイスし、最後にはチャックが勝ったのだった。
こういう明らかなことでも、いちいち抗弁されるので疲れる。さすがディベートの国だ。